しろ   たそがれ 
純き黄昏





深夜と呼ばれて可笑しくない闇。
しかし、月は見えず、空は雲が覆っている。
鼻につく、血の臭い。
降りしきる雨の中、少女は足をとめた。
手に握る朱色の傘からは、とめどなく水が流れ落ちる。
足元は泥がはね、白い足袋には斑点が出来た。
それでも構わなかった。
不思議と、惹かれた。
「ガキが、こんな時間にうろついてる…と…っ、ロクなこ…とねーぞ」
目の前に座り込む男は、彼女に向かって言った。
町中の、しかも自分の屋敷の前にそんな輩がいれば、立ち止まりもするだろう。
男は、身体の至る所に切傷があり、
その傷口からは血が凝固作用さえ忘れたかの如く溢れていた。
「貴様こそ、我が屋敷の前で何をしている」
白く、透き通る肌。
整った顔立ち。
彼女を天女だと言っても、決して誰も疑わないだろう。
それほど、人間離れした美しさ。
長いまっすぐな髪は結われていない。
紅く染まる衣には、美しい刺繍が施されていた。
そんな容姿であるにもかかわらず、冷たく言い放った。
「死にかけ、てるんだよ。見て、分からないのか?」
息も切れ切れに、その男は言った。
雨の中、白く染まる吐息は、雨のしずくにかき消されるように消えていく。
自嘲気味に笑う彼に対して、少女もまた、ふ、と笑った。
「ほぅ」
確かに、そう呟いて彼女は手を彼の顎にかけた。
無理やり、上を向かせる。
背をかがめた為、肩から、一房髪が流れ落ちた。
「死櫻が集まって来ておるわ」
「死人の肉を喰らう、アレ・・・か」
死櫻。
死を間際にした人間に寄り付く妖怪。
鳥の姿をしているが、それと比べられぬほどに醜い。
首まで並ぶ目玉に、あるはずの無い、嘴に生えている牙。
羽からは骨が突き出て、腐った肉が爛れたようにぶら下がっている。
その妖物は、死人の肉を喰らうのだ。
口から垂れ落ちる血が、櫻の花びらのように見える為、死櫻と呼ばれる。
彼女は、見上げることなく、彼の顔を見たままそう呟いた。
「見えるの、か?」
「あのような小物、見えたところで何にもなるまい」
妖怪といえども、鬼のようなもの。
ある程度、力がなければ見えるものではない。
時折、姿を見せるものは、それほどその妖物自身の力が強いということ。
「貴様、死にかけていると言ったな」
彼女は、持っていた傘を手放した。
ばしゃり、と音を立てて水溜りに落ちる。
「ならば、私の式となれ」
そうすれば、貴様の命も永らえる。
高慢な態度で、しかも命令口調で彼女は言った。
「ふ、ん」
男は、彼女の手を払い、上目遣いに見やる。
「俺を、飼おうと言うのか?」
「そうだ」
雨は降り止むことを知らないのか。
彼女の衣も、髪も、肌も、全てを包み込んでいく。
「…面白い」
男は笑った。
「どうせ無くなる命だ。貴様にくれてやるさ」
好きにするがいい。
最期にそう言うと、男は目を伏せた。





歳月が流れた。
あの出会いの日から一体、何年たっただろうか。
それほど長い時。
ばたばたと、乱暴な足音が屋敷に響く。

「黄昏!」

『タソガレ』と書いて『コグレ』と読む。
これは、彼女が自分でつけた名だ。
元の名前は、親兄弟を亡くしたときに捨てた。
今までの自分を捨てて、新しい自分へと。
生まれ変わるつもりで。
豪奢な作りの襖を荒々しく開き、中にいる人物を呼んだ。

「何だ、覇我(ハガ)。騒々しい」

驚くでもなく、黄昏は顔を上げる。
覇我と呼ばれたその男は、一瞬だけ息を止めた。
十数年も共にいるというのに、その容貌に慣れることはない。
大人になったその顔立ちは、一層美しいものに育った。
外を歩けば、誰もが振り返るほど。
恋文も、捨てるほどもらっているに違いない。
だが、彼はそれを目にしたことがなかった。
それを不思議にも思わなかったし、彼女がそれをどうしようと関係なかったからだ。
見下ろせば、黄昏は式と将棋をしていた。
相手をしている式は、女童の姿をしているが、その香りから庭の梅の花だと分かる。
この時期になると、こうして人の形を成す。
腕を組み、愛らしい口元をうーむとへの字に曲げている。
「黄昏さま、黄昏さま」
女童が呼びかけた。
気付くと、彼女は覇我から目をそらし、少女に目を向ける。
「小梅ね、もうわかんなくなっちゃったっ」
「そうか」
くすりと笑い、女童の頭を撫でる。
嬉しそうに表情を崩すと、自分を小梅と呼んだ少女は、
ぱたぱたと部屋を出て行った。
覇我は後ろ姿を見送ると、その場にどかりと座る。
荒々しい動作からも知れるように、この男、元々盗賊であった。
ただ、他の者と違ったのは、単独で行動していたことだ。
盗賊とは複数で行動するもの。
覇我に至っては、その当然の範囲から外れていた。
ヘマをして、返り討ちに遭い、殺されかけた。
そこを黄昏に拾われて以来、彼女の式となっている。
覇我の名前もまた、人間としての生を終え、
式としての生を受けたときに黄昏に名づけられたものだ。
盗賊であったことを示すかのごとく、荒々しいまでの覇気。
力強い腕。
鋭い眼差し。
髪は散切りになっており、布で額を巻いている。
黄昏より遥かに高い身長。
黄昏は見上げなければ、視線を合わせることなど出来ない。
今となっては、それも気にならないが。
それほど長い時間、共に過ごして来た。
「俺は用事があってココに来たんだ」
「何の用事だ?」
将棋台を脇によけて、覇我と向き合う。
「夕べ、また一人で出かけただろう?」
真剣な顔をして、彼は彼女を見据える。
怯えることもなく、黄昏は視線を返した。
「…それが、どうした?」
少しの間が空き、彼女は返事をする。
それが、返事と呼べるものかどうかは別として。
「少しは自覚持てっっ!!」
ムッとして怒鳴り返すが、彼女には何の効果もないようだ。
す、と横を向き、そ知らぬ振りをする。
「あんな時間に出歩けば、良からぬ輩に襲われても文句言えねぇんだぞ?!」
「そのような輩に負けるほど、私は弱くない」
最もな言い様に、彼は押し黙る。
それも勿論のこと。
彼女は、時を同じくして存在している陰陽師と似た術を使う、『双闘珠』なのだ。
『双闘珠』。
式と、妖しの術を併用し、町に蔓延る『妖かし』と闘い、狩る。
二つの術を同時に使うことが出来るが為、『双』。
その力は、異端のものとされたが、至極美しかった。
それを宝と例えて『珠』。
『双』つの力を使い、『闘』う、『珠』と見紛う者達。
それが、双闘珠と呼ばれる所以だ。
陰陽師と違うもののひとつは、使役する式だろう。
陰陽師が用いる式は、使役する者が死ぬ、もしくは力を極端に無くす、
そうなったとき、消えてなくなる。
元の姿に戻る。
だが、双闘珠は違う。
式を、単独で存在させることが出来る。
気を送り続けることで具現化させる式を、ある程度の氣を与え、断ち切る。
つまり、『命』を与えるのだ。
『命』を与えられた式は、単独で行動することが出来、単独で生きることが出来る。
だが、どの式とて、主の傍を離れる者はいない。
それほど、絶対的な力を持っているのだ。
ならば、何故。
陰陽師と同じく、宮廷などに仕えないのか。
誰もが思うが、誰もが言えないこと。

『異端』とされるからだ。

その力は強大すぎて、都の人間は畏怖する。
『そのような者たちに任せれば、いつかは自分達も殺されるのではないか』
陰陽師と同じような力を持ち、いや、それ以上の力を持つ双闘珠に、
人間達は恐れ、おののいた。
陰陽師のように、その力に頼りながらも、畏怖していることとは異なる。
その力に頼ることさえも恐れているのだ。
双闘珠は、時に妖かしではないかと囁かれた。
人間離れした、絶対的な力。
人間が持てるはずがない、と。


「私がどこへ行こうと、お前には関係ないだろう」
傲慢にも言い放つ、彼女の言葉に、不意に真剣な面差しになる。
「確かに、どこへ行こうとお前の勝手だ」
だがな、と彼は続ける。
「お前は式(おれ)たちの主なんだ。せめて、出かける時は出かけると言ってくれ。」
もしものことがあってからでは遅い。
そう案じてのことだった。
「莫迦か、お前は」
呆れるように、嘆息する。
真剣に忠告したのに、罵られたことに覇我は憮然とする。
「私がどこにいても、呼べばお前達は来る。私を護るのが、お前の役目だろう?」
そうして、不敵な笑みを浮かべた。
手を伸ばして、覇我の髪を掴む。

「私を護れ」

主の命令。
式ならば従わねばならない。
だが、主としての命令とは違う気がした。
白い、透き通った肌が彼に触れただけで、心臓が高鳴る。
何がそうさせるのか分からなかったが。
ため息をつく。
膝を立て、まるで西洋の騎士のように彼女の手をとった。

「…仰せのままに。主殿」

手の甲に静かに口付けを。
「安心しろ。お前達が心配するようなことじゃない」
微笑んで、彼女は立ち上がった。
覇我は彼女を見上げる。
どこか、少女のような笑みを浮かべながら、彼女は部屋を後にした。
「……心配するようなことじゃない、か」
どうだろうか。
少なくとも、彼にはそう思えた。
呟くと、振り返り、庭へと降りた。



その夜。
妖かし退治の為に外に出た。
毎夜毎夜、人を喰らい、聖結界を血で汚す妖かし。
都の人々は身を潜め、夜には出歩かない。
娼婦さえも姿が無かった。
だが、それさえも彼女にとってはどうでもよいこと。
誰かに頼まれたわけではない。
ただ、妖かしの声がうるさかった。
妖かしの気配が気持ち悪かった。
それだけ。
つまりは黄昏にとって、迷惑な存在だったから。

『私にとって邪魔だ。理由はそれだけで良い』

彼女らしい言い分だった。
ジャラ。
何かが地面に落ちた。
覇我がそれを拾うより先に、黄昏は拾い上げる。
彼女らしくない、慌てた様子。
面食らった顔で、背をかがめたまま彼女を見上げた。
「黄昏?」
呼びかけたが、彼女の返事はない。
暗闇の中、星と月だけが明々と光を放っている。
深夜だというのに、信じられないくらい明るい夜だった。
そんな中で、足元に落ちた小さなものが見えるのは、
式である彼だからこそ。
「それ、は」
暗闇の中でもはっきりと見えた。
見間違うはずがない。
何故ならそれは。
「桔梗印じゃないのか?」
ビクリと、肩を揺らす。
桔梗印といえば、陰陽師の中の陰陽師。
安倍晴明の持つものだ。
安倍晴明といえば、安倍益材の息子。
出生など、詳しいことを知っている人間はいない。
一部では狐の子では、と噂されているが、真相は分からないのだ。
若い身で、陰陽博士にまで昇りつめた実力派。
しかし、どんなに実力を持っていても、陰陽頭には成り得なかった。
なぜ、『双闘珠』である黄昏が、
『陰陽師』である安倍晴明の印を持っているのか。
信じられないものでも見るように、覇我は彼女を見やった。
「……そうだ」
しばらくして、肯定の意を表す。
落とされた小さなものは、
紫水晶に金箔で五茫星の描かれたもの。
手首にかけることが出来るほどの、小さな数珠だった。
「何で、お前がそんなモン持ってるんだよ?!」
同じような力を持ちながら、全く違う扱いをされる『双闘珠』。
この時代、『双闘珠』にとって、『陰陽師』とは目の敵のような存在だった。
口先だけの陰陽師であれば、双闘珠に近づこうなどとはしないが。
「貰い受けたからだ。」
諦めたように、彼女は口を開く。
「安倍晴明から、か?」
頭をさげ、ゆっくりと頷く。
「何でだ?!『陰陽師』は『双闘珠』にとって…っ!!」
「ハルアキは『陰陽師』ではない!!」
珍しく声を荒げ、覇我に食って掛かる。
「ハルアキは、ハルアキだ」
「『ハルアキ』?」
聞いたことのない呼び名に、眉をひそめる。
口を抑え、しまったという顔をする黄昏。
だが、観念したのか、渋々ながら話し出す。
「安倍晴明のことだ」
「『セイメイ』じゃなく、『ハルアキ』と読んでいるのか?」
「そうだ」

木漏れ日の中、縁側で腰掛けている童が2人。
何かを話している。

『セイメイだと皆と同じだ。私は同じは嫌だ』
『だったら、『ハルアキ』と呼べばいい』
『ハルアキ?』
『お前だったら構わない。俺をそう呼んでも』

他の誰とも違う呼び名。
誰も呼ばない、自分だけが知っている名前。
特別だと感じさせてくれた。
本当は違ったとしても。

元々、晴明と黄昏は幼馴染だった。
だが、双闘珠を継いで以来、彼とは会っていない。
『陰陽師』と『双闘珠』は共にいてはならない。
共にいることは出来ない。
それが、掟。
お互いの暗黙の決め事。
「数週間前だ。ハルアキと久しぶりに会ったのは」
変わっていなかった。
どんなに出世しても、あの飄々とした、つかみ所のない性格。
自分を見たときに浮かべた、子どものような笑み。
出会ってはならないと、
心のどこかで決めていたことが、ガラガラと音を立てて崩れた。
怖かった。
会いたくなかった。



惹かれてしまうと分かっていたから。



絶対の禁忌を犯してしまいそうな気がしたから。



「私は…私達は…最初から出会わなければ良かったのかもしれないな」
それが、誰達を指すのか分かる。
自嘲気味に笑みを浮かべ、彼女は俯いた。
覇我は、知らず知らずのうちに、拳を固めている自分に気付く。
ズキリ。
と心臓が痛くなった。
目の前にいる黄昏が、いつもの彼女ではないことに。


「来るぞ」


一瞬で張り詰められる空気。
凍りつくような痛みも、彼らには感じられない。
朱雀大路のど真ん中。
ガラガラと音を立てて、牛車が通る。
その後ろからは、松明を掲げた人ならぬものがぞろぞろと付き従って追ってくる。
髪は紅く天をつき、耳は人間のそれとは違い尖っている。
中には、目玉さえ持たない者もいた。
眼球のある部分が陥没し、だが、それでも惹かれるように牛車に付いて来る。
飢えた子どものように、腹がぷっくりと膨れている緑の肌をした童。
その裂かれた口からは、ぼたぼたと涎が落ちる。
全ての歯が牙で、鋭く尖っていた。
他にも、赤や黄の肌の色をした同じ背格好の者がいる。
『小鬼』と呼ばれる者たちだ。

『誰ぞ。我が道に憚る下賎の輩は』

女とも男とも取れる声ならぬ声が漆黒の闇へと響き渡る。
フン、と鼻を鳴らし、笑う。
「下賎の輩とは貴様のことだろう?」
シャラリと音がして、
小さな金の輪を懐から取り出す。
『ソレ』は光を放ち、
次第に何かの形を作っていく。
幾つもの金の輪を着けた錫杖に変化した。

「百鬼夜行の真似事をして、妖かしの王にでもなったつもりか?」

挑発的な台詞はいつものこと。
覇我はため息をつく。

『黙れ』

ゴォ、と殺気とも冷気ともつかない、風が2人を襲う。
『我を侮辱したこと、後悔するが良い!!』
「その言葉、そっくりそのまま返してやろう」
ニィ、と笑い、彼女はその風を斬る。

『!?』

片手には錫杖。
片手には印。
浮かべられた天女の微笑み。

「禍つ神の名の元に、我、封印を解く」

凛とした声音が妖かしの妖気を遮り響いた
『死ねぇえっっ!!』
気にする様子もなく、妖かしは牛車から飛び出し、黄昏に遅いかかる。
女の容貌に、男の着物。
だが、その眼は蛇の如く黒々と光っている。
段々と、白い肌は軋み、音を立て、蒼に染まっていく。
まるで、死人のようだと感じた。
否、そのものだったのかもしれない。

「印は鎖。封は枷。そのサダメ断ち切りて、ここに目覚めよ」

妖かしが襲ってこようとしている今も、彼女は怖気づくことなく呪を唱え続ける。
一瞬、バチリと音がして、彼女を目に見えぬ何かが護った。
妖気を跳ね返した。
ふと、彼女の前に影が立ちはだかる。
青龍刀を持ち、構えた。

「式・『覇我』!」

叫び、稲妻の如く、光が落ちる。
カッと光が一面を覆い、視界が白くなった。
すると、そこには大きな一匹の狼が現れた。
その毛色は血のように紅黒く、身体の周りには時折、小さな稲光が見える。
殺気だらけの口元からは、恐ろしいほどの鋭い牙。
小鬼とは、比にならない。
前かがみになり、襲い掛かってきた妖かしに飛び掛る。
悲鳴が聞こえる間もなく、その喉元に喰らいついた。
妖かしと共に、地面へと落ちる。
ぐしゃりと音がして、
妖かしの腕はあらぬ方向へと曲がった。腕だけではない。
足も、首も。
痙攣を起こしたように、何度か腕を動かしたが、それも長くは続かなかった。
グツグツと身体が沸騰したように溶け出し、蒼の粘液となって地面へと広がる。
牛車についてきていた小鬼達は、主が殺られたと知ると、
奇声を上げながら、散り散りに逃げていく。
放り出された松明は、明々と燃えていたのに、すぐに闇へと消えた。
牛車も同じく、すぅっと消えてしまった。

『…あな口惜し…や…』

最期に掠れるような声が聞こえ、辺りは再び闇へと眠りについた。
本当に少しの時間の出来事。
「戻れ。」
その言葉と共に、風が吹き、狼は人へと姿を転じる。
狼から覇我へと。
「よくやったな」
ガシガシと犬の頭でも撫でるように、彼女は座り込んだままの覇我の頭をかき回す。
「やーめーろっっ!!」
それが気に入らなかったらしい彼は、彼女の腕を払う。
くすくすと笑う彼女に憮然とする。
「ったく」
「そう拗ねるな」
隣に共に座り込む。
普通の女ならば、着物のまま地べたに座り込む真似などしない。
だが、彼女は汚れることも気にしない。
そんな彼女をつ、と見てすぐに横を向く。
「……陰陽博士のことは聞かないでいてやるよ」
仕方ねぇから。
彼は言うと、彼女から視線をそらした。
一瞬呆けたが、彼女は悲しげに微笑むと、空を仰いだ。
「…すまない」
「違うだろ?」
「何?」
彼は、返事に不満そうに眉をひそめる。
「こういう時は『ありがとう』って言うんだよ」
ふ、と笑い、
彼女は両手で双眸をふさぐ。

「感謝する」





弐へ