じくうびと |
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■■2時空■■ |
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何故、ヒトは生きるの? ―――放り出された記憶 何故、ヒトは愛するの? ―――留まってしまった想い 何故、ヒトは欲するの? ―――確かにここには君がいたはずなのに 何故。 ―――還らぬ声を求める ヒトとは、こんなにも愚かしいのだろう。 ―――ぬくもり探して手を伸ばす こんなにも。 こんなにも。 こんなにも。 ―――どこにもいないと織っているのに 愛おしくてたまらないのだろう。 「……見つけた」 放り出された記憶 留まってしまった想い 確かにここには君がいたのに 還らぬ声を求める ぬくもり探して手を伸ばす どこにもいないと織っているのに 降り出した雨に打たれた 頬を濡らすのは雨だけだと 思い込ませたかったんだ 祈り続ける虚しさを 君は笑い飛ばすだろうか いつものように 僕を叱りつけてくれるだろうか いつもあったぬくもりも いつもあった微笑みも 当たり前のように感じていた それが間違いだったんだね 気付いた時にはもう遅い 降り続ける雨に目を閉じて 僕は 君を想うよ 変わらず 君を想うよ―――… シン、と静まり返る店内。 一斉に響き渡る拍手喝采。 人々は口々に褒め称える声を、歌手へと贈った。 歌手もまた、ステージの上から深々とお辞儀をして微笑む。 ステージといっても、客の床よりも10p高いくらいの場所。 店の端にピアノと共にある、こじんまりとしたステージだ。 「ありがとうございました」 ヒトの良さそうな顔をした男だ。 彼女はそう感じた。 店の閉店時間が迫り、客足も遠のく。 店内では、1人2人、人影が見える程度である。 先程歌っていた男も、そろそろ帰ろうとしていた。 だが。 「とても素敵な歌だったわ」 静かな中だからこそ響く、透き通った声。 髪の長い、黄金の瞳をした女が彼を賞賛する。 「ありがとう」 男は微笑み、彼女の傍らへと足を運んだ。 「名前、知りたいな」 僅かに目を見開き、すぐに戻る。 彼は、たじろぐこともせず、名乗った。 「僕はジスタ。君は…。」 浮かべていた笑みを、哀しげなものへと変える。 「君は、『時空人』だね?」 形こそ質問口調だが、はっきりと確信している。 「貴方が感じるならそうじゃない?『世迷人』さん?」 意地悪っぽく笑いながら、『時空人』は上目遣いに彼を見上げた。 ジスタは『時空人』と同じテーブルに腰掛けた。 「…哀しい歌ね?」 「そう?」 「えぇ。哀しい歌」 頬杖をつき、真正面から見据える。 ジスタは、目を逸らすことはしない。 「貴方の『キモチ』?」 お手上げ、というように、彼は椅子の背もたれへと重心を傾ける。 「そ。妹への歌」 目を覆い隠すように、両手で塞いだ。 途端、広がる闇。 まるで、あの日のように。 「10も年下の妹がいてさ。歳も離れてるから、結構可愛がっていたんだ」 陽だまりの下、歳の離れた兄妹が野原を駆け回る。 『ほら、こっちこっち!』 『待ってよ、お兄ちゃんっ!!』 さわさわとざわめく風が、時折髪を撫でていく。 「ラティーヌっての」 兄に抱きつき、少女は無邪気に微笑う。 『やぁっと捕まえた!』 肩で息をしながら、ジスタの腰にしがみついた。 そのまま、バランスを崩したのか、2人して草原に倒れ込む。 『わ!』 『きゃあ!』 見上げた空はどこまでも蒼くて。 白く流れ行く雲は、どこまでも白かった。 そんな時間が、ずっと続くと信じていた。 「事実可愛かったよ。誰にも渡さん!ってくらい」 体を起こして、冗談交じりに身振り手振りで話す。 『時空人』は、穏やかに微笑んだ。 彼女の様子が意外だったのか、少し驚いた表情を浮かべた。 多くのヒトの反応を見てきた『時空人』が、今更気にするとも思えないが。 「でも、生まれつき体が弱くて、去年突然逝ってしまった」 声のトーンが落ちる。 体が弱いと言っても、幼い頃はまだ走り回るくらいは平気だった。 ふと、そんなことを思い、悔しげな顔を俯かせる。 前髪を掻き上げるようにして、右手を額に擦りつけた。 『ね。お歌、聞かせて?』 ベッドで弱々しく、ラティーヌが呟く。 幼い頃、小麦色に焼けた肌も、今は陶磁器のように青白い。 『お兄ちゃんのお歌、聞きたいな』 『また、今度な。今はゆっくり眠った方がいい』 痩せ細った手を握って、ジスタは言い聞かせた。 父も母も、ラティーヌの薬代を稼ぐ為に働いている。 一番長い時間、傍にいたのはジスタだった。 『厭。今がいいの』 『どうして?』 『分からないけれど、今がいいの』 駄々をこねる幼子のような妹に苦笑する。 ふ、とラティーヌは表情を曇らせた。 『私、お兄ちゃんを困らせてる?』 『どうして?』 優しく、問い掛けた。 『昔みたいに、笑ってくれないんだもの』 思わず、絶句した。 そんなにも自分は、上手く笑えていなかっただろうか、と。 『私、お兄ちゃんのお歌好きよ』 『どうして?』 ぷぅ、と頬を膨らませ、そっぽを向く。 『さっきから、『どうして』ばっかり』 握られていた手を、微かな力で払う。 『分からないから、仕方がないだろう?』 妹の機嫌を損ねたようだ。 軽く頭を撫でる。 『考える前に尋ねてる。ずるいわ』 『分かった、分かった』 諦めたように、ジスタは降参の意を表すポーズをとる。 つ、とジスタを振り向くラティーヌ。 開いていた窓から、風が入ってきた。 レースのカーテンが弧を描いて踊り出す。 『ふわり ふわり そよぐ風に揺られ』 高くもなく、低くもない歌声。 けれど、透き通った声。 『開かれた目には何が映る?』 澄みきった蒼空は、彼の歌を吸い込んでいくようで。 『変わらない町並み どこまでも続く空 小鳥達の戯れ 全てが愛おしくなっていく こんなにも当たり前のことが とても素敵な出来事 ねぇ 君は気付いてるのかな? 望むものはすぐ傍にあるということを ほら 君はこんなにも自由だよ 愛するということを 織っているのだから 閉ざした扉など壊してしまおう 暗闇なんてどこにもないんだ 全ては光に満ち溢れ 輝いている だから ね? 素敵な出来事を探しに行こう』 終わると、拍手が耳に届く。 ゆっくりと目を開いて、ジスタはベッドの妹を見やった。 『私、お兄ちゃんのお歌好きよ』 嬉しそうに頬を蒸気させて微笑む。 『だって―――だもの』 ―――そういえば、あの時ラティーヌは何て言ったっけ? 『ありがとう』 そして。 『おやすみなさい』 ラティーヌは言って、眠りについた。 永久への眠りに。 だからこそ理解できた。 あの時でなければ厭だと言った妹の台詞が。 だからこそ悔しかった。 あの時どうして気付かなかったのだろうと。 「覚悟はしてたつもり、だったんだけどなあ」 語尾は掠れ、涙声になる。 懸命に涙を堪えようとしているのが分かった。 「そんなに簡単じゃなかった」 深呼吸して、言葉を紡ぎ出す。 穏やかに微笑むが、やはりどこか哀しげだ。 「僕が歌うと、微笑ってくれたんだ。嬉しそうに」 『私、お兄ちゃんのお歌好きよ』 君の最後の言葉に、『おはよう』さえも返せなかったあの朝。 やけに妹の微笑が、声が響いてきた。 「だから、僕は歌い続けてるのかもしれない」 歌い続けることが、彼女への追悼となるならば、それで構わない。 「アイツに届くように」 彼女の魂が少しでも救われてくれるのならば。 少しでも、慰みになるのならば。 「だから、哀しい歌なのね」 『時空人』はぽつりと呟いた。 「だから、哀しいダケの歌なのね」 彼女は目を伏せ、つまらなさそうに再び呟いた。 「え?」 一瞬、意味が分からずに目を瞬かせる。 「何でもないわ」 気にも留めずに、『時空人』は首を振った。 答えを求めたものではなく、独り言のようなものだったのかもしれない。 「貴方に、願いはある?ひとつくらいなら叶えられるわ」 決まった台詞を紡ぐ『時空人』。 『世迷人』へのほんの少しの感傷だった。 『世迷人』を消すことに、微かな迷いもない。 それが。 それだけが。 『時空人』の存在意義なのだから。 「妹を生き返らせて、ってのは無理よ」 先に、言われそうな願いを断っておく。 よくあるのだ。 母をを黄泉返らせてほしいとか、恋人を死なせたくないとか。 「生命を黄泉返らせるのは、ルール違反なの」 自然の摂理に反する、といったところだろうか。 どんなに有能な医者でも、一度死んだ人間を黄泉返らせることは出来ない。 どんなに神様に祈っても、天に召された魂魄を戻すことなど許されない。 厳密に言うと、黄泉返らせては『ならない』のだ。 「じゃあ、今のところ無いな。」 言おうと思っていたことを、先に言われてしまい、ジスタは嘆息する。 「すぐに消されたって、心残りもなさそうだし」 乾いた笑いを返して、手を差し出した。 しかし、その手はすぐに払われる。 「厭よ」 『時空人』は鋭い視線で彼を睨む。 これには、ジスタも冷たいものを感じた。 「今のままの貴方なんて、私は連れて行きたくないもの」 『世迷人』を消し去ることへの拒絶。 彼女にしては珍しいことだった。 「貴方に足りないものを気付くまで、私は貴方を連れて行かない」 何とか、気力を取り戻し、逆に『時空人』へと尋ねる。 「もし、死ぬまで気付かなかったら?」 ふ、と表情を和らげ、『時空人』は囁いた。 「その時は、亡骸を無に返すだけだわ」 冷たく、跳ねつける様な台詞だと言うのに、 何故、こんなにも穏やかに聞えるのだろう。 「貴方は何も気付いていない」 『時空人』は席を立った。 「何も織らない。織らなさ過ぎる」 浮かべていた笑みを消し、冷たく見下ろす。 「愚かだわ」 あぁ、そうね。 『時空人』は呟くと、頷いた。 「現に貴方は、彼女の最後の言葉さえ憶えていないみたい」 図星をつかれ、ジスタは目を見張る。 見抜かれている。 そう感じた。 「そうだね」 疲れたように、呟く。 「僕は愚かだ」 彼が顔を上げた時には、『時空人』の姿はどこにも無かった。 足りないもの。 それが何か分からない。 けれど、分からないままでも構わなかった。 何故かそう思えた。 諦めに近い感情。 どうでもいい、と感じている。 『時空人』が現れた時、やっと終わることが出来ると安堵する自分がいた。 彼女は、それを拒んだけれど。 ベッドに寝転び、天井を見上げた。 「何で…消してくれないんだろ」 呟く。 下の階では、両親が談笑しているだろう。 妹が亡くなって、母は仕事を辞め、主婦に戻った。 父は無理な仕事はしなくなった。 高い薬を買う必要が無くなったから。 突然、訪れた死は受け入れがたいもので、けれど確実に生活の中に映し出された。 1つだけ多い椅子。 1つだけ多いスープ皿。 1つだけ多いスプーン。 1つだけ多いティーカップ。 それを片付けるだけの勇気もなくて。 もう使われない部屋も、いつも綺麗に掃除されていて。 余計に彼女がいないと実感させられた。 「消えたら、どこに行くんだろう」 ふと、思う。 すぐに、そんな考えは笑い飛ばしたが。 「きっとお前のところには行けないのだろうね」 寝返りを打つと、ベッドが軋んだ。 柔らかいクッションは、顔を覆い隠す。 あの時の涙は、どうして今も流れ続けるのだろう。 ジスタの働く店に、『時空人』はいつも現れた。 彼の歌が始まる前に席につき、終わると出て行く。 言葉も交わさずに、ただそれだけの繰り返し。 マスターも気付いてか、ジスタに問い掛ける。 「あの娘さん、最近よく来るね」 「あぁ…。そうだね」 「お前さんのファンかもしれんぞ」 冗談交じりに、彼を冷やかす。 「そんなんじゃないよ」 「まぁ、そんな照れなさんな」 彼の否定を、照れ隠しと受け取ったのだろう。 マスターは顔を和らげた。 「ジスタ。お前さんも良い歳だ。そろそろ大事なヒトでも作ったらどうだい?」 彼はカウンターの中で、グラスを手に取ると拭き始めた。 時折、グラスの中を覗いては曇りを取る。 「それどころじゃないみたいなんだ」 「何か気がかりでも?」 答えを返さず、ジスタは苦笑した。 思い出したように、彼はマスターに尋ねる。 「ねぇ。僕、最近変わったかな?」 突然の問いかけに、不思議そうな表情を浮かべる。 「どうかしたのかね?」 「そういうわけじゃないんだけど」 ふむ、と彼は顎鬚を撫でながら考えあぐねた。 持っていたグラスは、後ろの棚に片付けられる。 「歌、かねぇ」 「歌?」 「昔と感じが変わった気がするよ」 声が、では無い。 変わらず、耳に届く音色は美しく澄んでいる。 「ちょうど…そうだな」 言いにくそうに、言葉を濁らせた。 「ラティーヌが天に召されてからかもしれない」 思い出させてすまない、と彼は詫びる。 ジスタは軽く首を振って、笑った。 「いいんだ、ありがとう」 ヒトのいなくなった店内に、椅子をひく音が良く響く。 ジスタは立ち上がると、荷物を手にとった。 「ジスタ」 振り返ると、マスターが淋しげな顔を浮かべている。 「新しい歌は、まだ歌えないかい?」 「え?」 「ラティーヌは違う歌が聞きたいんじゃないかな?」 『だって――――…』 閃光のように、甦るフラッシュバック。 ジスタは震える感覚を、力の限り抑え込んだ。 ―――そうだ 戦慄く唇は、音を生み出さないまま小刻みに動く。 ―――あの時、確か…ラティーヌが言ったのは 『《希望》があるんだもの』 「思い出した…」 ジスタは呟く。 顔を上げれば、マスターが非道く驚いていた。 「あぁ。どうしたんだい、ジスタ」 何を驚いているのだろう。 漠然と思ったが、すぐに理由がわかった。 頬に温かいものが流れている。 パタタ、と幾筋もの涙が頬を濡らす。 ゆっくりと首を振った。 「思い出したんだ。僕に…僕の歌に足りなかったものが」 マスターは微笑んで、温かい珈琲をカウンターに置いた。 「さぁ、飲みなさい。あたたまるよ。」 立ち上がった彼だったが、再び椅子に掛ける。 涙を拭って、顔を上げた。 ふっきれた表情をしたジスタに、彼はもう一度微笑んだ。 「何か、探し物をしていたようだね」 「そう」 「もう、見つかったようだね」 「うん」 もう1つのカップに、淹れたての珈琲を入れる。 ジスタのカップに軽く触れた。 カチン、と陶磁器のぶつかる音がする。 「いい顔だ」 「ありがとう」 湯気の立ち上るソレを、ジスタは口に運んだ。 どこまでも広がる『時空間』。 全てを包み込み、無へと還す。 『時空人』は手を伸ばした。 そこが上か下かも分からない。 けれど、手を伸ばした。 「見つけたみたい」 呟く。 見上げて、微笑った。 「ねぇ。私達にも《希望》なんてあった?」 何かを抱きしめるように、体を丸める。 「迎えに行かなきゃ、ね」 言うと、『時空人』の姿は闇へと紛れていった。 カラン。 店のドアの鈴が鳴る。 いつものように席に着く『時空人』。 「願い事、見つけたんだ」 見上げれば、ジスタがいた。 コトリ、とジュースの入ったグラスを置く。 小さな泡が表面へと何度も何度も昇ってくる。 グラス越しに『時空人』の姿は、上下が逆に映し出された。 「みたいね」 「新しい歌、作った」 「そう」 「この歌を、最期に歌わせて欲しい。それが、願い」 視線を逸らさずに、真摯な瞳で見つめる。 柔らかく、穏やかに『時空人』は微笑みながら頷いた。 ゆっくりとした足取りで、いつものステージへと上がる。 店の客は、彼の歌が始まると、シン、と静まり返った。 目を閉じて、落ち着かせる為に深呼吸する。 だが、いつもより何倍も落ち着いている自分がいた。 『目覚めれば外は雨だった』 君が永遠の眠りについた朝。 『幾つもの透明な雫が 線を描いて大地を濡らすよ』 留まる事の無い涙は、皆の頬を濡らした。 『僕は手を伸ばして 触れることも畏れて』 冷たくなって眠る君を、僕は怖いと思ったんだ。 『ここから歩き出せずにいた』 時は止まったまま、否、留まらせたまま。 『瞬きする毎に変わり行く風景を 認めようともせずに』 無情にも確実に流れていく時は、いつでも胸を突き刺した。 だからこそ、畏れた。 『変化』と言う名の自分自身の成長を。 『永久』と言う名の彼女の止まってしまった時間を。 『雨が濡らした大地から 新しい生命が芽吹き始める 木々は雫を湛え 風と共に囁き出した 雲間から覗く太陽が 全てを光に包んでいく 色付き始めた世界 一斉に輝き始めた 両腕を広げて 抱きとめて ぬくもり 優しさ 慈しみ全て ずっと傍にあったもの やっと気付くことが出来たんだ』 そう。 傍にあったんだ。 『だんだんと柔らかくなっていく雨に微笑み ゆっくりと瞳 開いてみよう きっとそこには 空から空を繋ぐほどの 大きな虹がかかっているから』 誰かが言った。 止まぬ雨は無い。 明けぬ夜は無い。 もしそう感じているのならば、それは己の心の弱さが見せる幻影。 雨はいつだって、虹を見せた。 夜はいつだって、星々を輝かせた。 そう。 気付いていないだけだったんだ。 『頬に打ちつける雨も ほら 輝きに変わっていく―――…』 背後には『時空人』の姿。 二の腕まであるグローブは無く、代わりに絡みつくような文様が描かれた腕。 白く、細いその腕で彼女は彼を抱きしめた。 歌が終わると同時に、ジスタの姿は薄れて行く。 そうして、世界は正常を取り戻した。 『時空人』は閉じていた目を開いた。 何度か瞬きをして、辺りを見回す。 そんなことをしたとて、何ひとつ変化の無い『時空間』。 「『変化』、か」 彼女はひとりごちる。 「確かに、姿を変えることは出来るけど…」 すぅ、と伸ばされた腕は、子どものソレと同じだった。 腕を戻すと、成人した女性の姿へと転じる。 「変わらない」 再び目を閉じると、その瞼の下から一筋の涙が零れる。 「貴方は聡いヒト」 ぽたり、と膝の上に落ちる雫。 「とうの昔に、織っていたのね」 パタリ、パタリと雫は落ちる。 「そうでしょう、シェイド?」 けれど、『時空人』を濡らすことも無く、涙は時空へと吸い込まれた。 1つ、ため息を吐いて『時空人』は寝転んだ。 「ゆっくりとお休みなさい、ジスタ」 ガタリ、と止まっていた歯車が動き始めた。 END |
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あとがき。 | ||||
『時空人』第二弾! 最後はいつも、時空人の泣き顔と決めております(笑)。 うわ、外道。 本当は3話も書いているのですが、それは漫画のプロットに書き下ろしましたので、 少し手直ししてから。 |