365日、同じようにまわる日々

過去を振り返らないのが信条だけど

でも、この日くらいは過去を振り返ってもいいかなって思うんだよ




Happy  New  Year
By.anam様

「ったく、なんでこんな寒い日に外に出なくちゃいけないんだよ」
「2年参りをしたいって言い出したのは悟空だからね。怒るんなら悟空に言ってよ」
 白い息を吐くだしながら不機嫌そうに言った三蔵の隣を歩いていた静夜は八つ当た
りを回避するためにこう
言った。
しかし、本来ハリセンを喰らわれるはずの悟空は2人から3m離れた所で悟浄となに
やら言い合いをしていた。
大衆の前面で「エロエロエロエロガッパ!!」と大声を出している悟空を見て三蔵は

づくのをやめて出していた
ハリセンをそっとしまった。
他人の振りを決め込んだようだ。
その様子に静夜とその隣にいた八戒は顔を見合わせて笑った。
「三蔵、静夜、八戒ー何してんだよ早く来いって!!」
 他人の振りを決めた瞬間に聞こえてきた悟空の声。
三蔵のこめかみに青筋が入ったのはその瞬間で、
人ごみを掻き分けようやく悟空と悟浄の元にたどり着いた瞬間に2人がハリセンの餌
食になったのは
言うまでも無い。

「何もあんなに強く殴んなくたって良いだろ!?」
「公衆の前面でエロっつーなって言ってんだろ!!」
「ってかなんで俺まで殴られなきゃらならないんだよ、この生臭ボーズ!!」
「…あたし、生臭坊主って久々に聞いた」
「あはは、ほんとですねぇ」
 後ろにいてイライラしている人々の視線を全く気にせずに五人は境内のお賽銭箱の
前に立って騒いでいた。
実際に騒いでいるのは3人だけだが。
たっぷり5分たった後で静夜が人々のイライラした視線に気付いた。
「あ、ほらいつまでもこんなとこで騒いでないでとっとと賽銭入れて帰えろーぜ!!」
 と、三蔵たちを宥めてからポケットから20円を取り出し、箱に投げた。
そして、目を閉じた。


「あー寒かった」
 宿に着いた5人を迎えてくれたのは熱くなっている地元特産の地酒だった。
冷たくして飲むべき酒を暖かくして待っててくれた女将に感謝しながらそれぞれ酒を
口につける。
「しっかし、去年もイロイロあったよな」
「そうですよねー、今年も色々あるんでしょうね。きっと」
 悟浄と八戒が酒を飲みながら言い合う。
「なあ! なんか願掛けとかした?」
 悟空が隣にいる静夜に声をかけた。
静夜は飲んでいた酒を口から離し逆に聞いた。
「悟空は、なんかした?」
「……静夜、俺が食べもんのこと考えたとかって今思っただろ?」
 心なしか可笑しそうに笑っている彼女に対して怪訝な顔で悟空が聞くと、
「…バレた?」
「ひっでぇ!!」
 吹き出した静夜を見て悟空は思い切り睨む。
暫く笑っていたが睨んでいる悟空に気付くと静夜は笑うのを止めた。
「ごめんごめん。で、なんかお願いしたの?」
 悟空は頭を振った。
「ううん、してないよ。だって、結局何か願ってもそれを叶えるのは自分じゃん」
 そういった悟空に静夜はにっと笑った。
「そうだな。…きっと三蔵たちも何もやってないぜ」
「じゃ、静夜も何もしなかったんだ」
「ああ。どっちかって言うと……」
 金の瞳に見つめられ、静夜は2年参りの時のことを思い出しながらこう続けた。
「あたしは、境内で去年の事とか過去のことを、振り返ってた」
「なに、そんなことしてたワケ?」
 悟浄が驚いたように聞いて来た。
「そうだけど、なんか都合悪い?」
「だろ? だってこういうのはさ、先の事を考えるってのが妥当ってモンでしょ?」
 なあ? と八戒に振り返り聞くと彼も頷いた。
「そうですよ。先の事を考えるならまだしも…」
「……くだらねぇな」
 今まで黙っていた三蔵も口に出す。
静夜は目を大きくしていたが、そのうちに軽く息を吐いた。
「…お前らなら言うと思ったよ。でも、こういうときじゃないと振り返る事も出来な
いじゃないか」
「何故振り返る必要がある?」
 三蔵が嫌そうに聞くと静夜は薄く笑い黙ることなくこう言った。
「自分がここにいるって感じたいから」

「自文がここにいるってふと実感したんだ。過去を振り返って、去年を思い起こしたときに。どんな過去でも、それがあって今のあたしがいるって強く感じたんだ。なんか、心にズシってきてさ。あたしはにここにいるんだって本当に感じた。それと同時に先に行く自分も感じた。だからあたしは昔を振り返った」


過去を感じて
今を感じて
未来にいる事を
確信して進む
それをとても大きく感じた瞬間

「過去を振り返るなんてあたしの信条じゃないけどさ。でも、こういう風に感じんのもいいでしょ」
 笑って言った静夜を見て4人は互いに顔を見合わせる。
最初に静夜の顔を見たのは八戒だった。
「相変わらずですね」
「そりゃどうも。多分、今年もこの調子で行くから」
 とにっと強気に笑うと手にしている酒の入っている器を差し出す。
「どうぞ宜しく」
「こっちこそ」
 カチンと器を合わせたのは悟空。
「こちらこそ、今年も色々あるでしょうがよろしくお願いします」
 続いて八戒が器を合わせる。
「俺も多分かわんねぇけど。ま、よろしく頼むわ」
 と面白そうに悟浄が器を合わせた。
「そう簡単に変わって堪るかよ。…ったく、変なコト言ってんじゃねぇよ」
 と面倒くさそうに仕方なさそうに器を合わせたのは三蔵。
4人のそれぞれらしさを見て静夜はもう一度笑う。
「今年もどうぞよろしく」

それと

どうか、皆、幸せに過ごせますように…

そう心の中で願った

新たな年の始まり




Fin

あとがき。
実は新年に頂いていたシロモノ。
私が大歩危なので、今までしまいこんでいました(爆)。
ごめんなさい。
そしてありがとうございます、anam様。
しっかし、静夜殿まで出てきていますわvv
ムサイ野郎ばかりの新年よりも、華がある年明けの方がどんなに良いか!!(笑)
anam様のオリジナルキャラなのです、静夜殿は。
可愛いというか、強いと言うか。大好きなのですよvv

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