□議題:風呂□




いつも通りの学校。
いつも通りの放課後。
いつも通りの
―――
「本日の議題は風呂について話し合いたいと思う」
何だか良く分からない部活動。
「最近、半身浴などが騒がれているが、正しい入浴の仕方、風呂のあり方について皆の意見を聞きたい」
(半端に古い!)
壇上で取り仕切っているのが部長の赤井。
椅子に掛けているのは、ゴツイのが緑川、いかにも美少年風なのが青山。
ついでに、少し離れて掛けているのが顧問の南部。
ちなみに、部員はこれだけである。
「お風呂と言えば、ちょうどいい温度というのがあるよね」
「50度くらいが良いんじゃぞ!」
「煮えるぞ!!」
「それくらいじゃないと、訓練にならんじゃろうが」
(何の
―――?!)
ちなみに、南部の突っ込みは尽く無視される。
「そう言えば、青山の部室には風呂があったな」
「え?噴水なら覚えているけど、あったっけ?」
この部活動には部室が、ここの他に何故か3つある。
一人一部室の時代到来の先駆けらしい。
そうこうしている間に、青山の部室。
部室専属執事が出迎える。
相変わらずきらびやかな、光物好きのカラスを思い出させる内装だ。
「ほら、やっぱり風呂なんて…」
「このボタンひとつで水からお湯に変わるのさ」
「何の為に?!」
カチリ、と何処に持っていたか分からないが、
スイッチを取り出し、作動させる。
しばらくすると、噴水から白い湯気が立ち上る。
「おお!」
狭い密室空間で、そんな状況になろうものなら、
忽ち酸欠状態になるのは目に見えているだろうに。
数分後。
「し、死ぬかと思った…」
「まぁ、これもよくあることだ」
「あるの!?」
曇った眼鏡を拭きながら、何でもないことのように赤井が言い放つ。
「さて!ここで緑川に手本として入浴してもらう!!」
「何で
――――!!?」
「ワシなら準備オッケイじゃあ!」
「いつの間に!!」
腰にタオルを巻き、噴水の淵に足を掛ける緑川。
不意に、鋭く目が光る。
「ぬどりゃあああ!!」
「緑川
―――ッッ?!!!」
噴水の獅子の首を抱え込んだかと思うと、そのまま力に任せて破壊した。
湯も水も飛沫がかって溢れ出す。
「一体、どうした緑川」
「すまん、熊を見るとどうしても昔の血が騒いでのう…」
「あれは獅子だ」
崩壊した獅子の像が空けた穴を、
素晴らしい手捌きで塞いで行く部室専属執事が目の端に映ったが、
この際気にしないでおこう。
「だったら、今度はヴィーナスを作るとするよ」
「そっちか!」
「日本の風呂と言えば、檜風呂だ。ちょうど良いことに我が部室にも今現在風呂がある」
「だから、何で部室に風呂があるんだよ!!」
「行こうか」
(無視された!!)
水浸しになった青山の部室を後にし、一同は赤井の部室に。
ガラリと空けた瞬間、湯気が立ち上る。
こちらは風通しが上の方に作られているようだ。
「何か…前と造りが違うような…仏壇は…?」
前回、足を踏み入れた時は、確かに仏壇があった。
が、取って代わるように檜風呂が備えられている。
「案ずるな。仏壇はあそこだ」
指差した先には、天井近くに付けられた棚に置かれた仏壇。
「あれは仏壇と言うより神棚だろ―――!!」
「本人が仏壇と言い張っているのだから問題なかろう」
「言い張るな!」
言っている間に、青山が風呂に手を入れる。
「これって温泉かい?」
「良くぞ聞いた。効能は肩こり・リューマチ・神経痛に」
「何を見ているんだ、赤井」
浴槽の向こう側に置かれている立て看板のように見える、
むしろそれにしか見えないものを淡々と読み上げた。
「…3日前に行った旅館からの提供だ」
「嘘吐けぇ
―――!!引っこ抜いてきただろ、明らかに!!」
こちらを見ようとしない赤井に、南部は容赦なく突っ込む。
殆どが却下されるのが分かっていても、突っ込まずにはいられない。
「風呂と言えば温泉。しかし、温泉が近くになければそれを楽しむことも出来ない。そこで、私は素晴らしいものを見つけた」
「何じゃい?」
「とても興味があるね」
「…俺は無い」
言うまでも無く、顧問の意見は無視。
「家でも簡単に温泉が楽しめると言う、魔法の粉だ!」
「入浴剤だ!!」
「南部顧問、知ったかぶりをするのはやめてもらおう。これは『温泉の素』だ!」
「同じモノだ
―――!!!」
明らかに馬鹿にしたように鼻で笑う赤井。
薄い攻防戦が繰り広げられている傍らで、
青山がいつものアングルに頬杖で『温泉の素』を掲げる。
「これで、家でも箱根気分ってワケだね」
「天国じゃあ!」
(最悪だ!!)
「よし、では本日はこれにて解散!!」
結局、いつも通り何が何だか分からないまま、部活動は終わりを告げた。






あとがき。
織ってるヒトだけ分かってください(笑)。
こんな感じでほぼ間違っては無いと思います。
ホントにこんな漫画です。

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