じくうびと |
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■■1時空■■ |
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『時空人』。 それは、時代に生じる『世迷人』を消す役目を持つ者。 ヒトではなく、時空の生み出した一部。 『世迷人』。 それは、存在することが許されない者。 何かの弾みで、生まれてしまった生命。 『時空人』が『世迷人』を消すことによって、正常にもどる。 その存在を全ての者が織っているのに、姿を織る者はいない。 けれど、『時空人』は『世迷人』がいる限り、何度でもヒトの前に姿を現す。 それでも、ヒトは『時空人』の姿を織ることはない。 青空を暗雲が覆い、次第に雫が大地へ落ちる。 幾千もの冷たい針が容赦なく降り注いだ。 「うわ、降り出した!」 雨の中、1人の少年が走り抜ける。 持っていた書物で頭を隠した。 その程度で雨が防げるはずも無く、全身ずぶ濡れだ。 容赦なく降りしきる。 河に架かっている橋に近付いた時、小さな影に気がついた。 「?」 それは、子どものようだった。 薄紫の長い髪が二つに、高いところで結いあげられている。 纏っている服は深い紫で、長いグローブとブーツも同じ色だ。 「おい、何してるんだ!?」 彼、セイは傘も差していない少女の肩を掴む。 振り向いた時に見えたのは、吸い込まれそうな黄金の瞳。 「―――……」 息を呑んだ。 刺されそうな鋭い眼差しに。 子どもでありながら、子どもとは程遠い雰囲気。 何よりも不可思議だったのは。 (…濡れていない…?) そう。 濡れていなかった。 繰り返し、繰り返し、打ちつける雨も無いかのように。 口が、導かれるように勝手に動いた気がした。 「君、は―――…?」 少女は、意味ありげに口の端だけ吊り上げて笑った。 「『時空人』」 雨脚が強まっていく。 相変わらず外の天気は変わらないというのに、 この部屋の中にいる人物の印象は180度変わっていた。 「こんな美少女がいるのに、お茶の一杯もでないの?この家は」 これだから子どもは、とため息をつきキッチンの椅子に腰掛ける。 先程子どもらしい、否、人間らしい仕草など微塵も感じなかった少女。 「…君のほうが子どもじゃないか」 「見た目で判断しないで欲しいわね。私は『時空人』よ。貴方の年なんてはるかに越えてるわよ」 再び聞く名。 『時空人』、確かにそう名乗った。 だが、未だにセイは信じられずにいた。 信じられようはずもない。 『時空人』といえば、殆ど御伽噺の中の人物。 実際に存在しているなどとは、夢にも思うまい。 迷信だ、と。 じとり、と目の前にいる少女を睨み、カップを渡す。 中にはホットミルク。 「…ドウゾ」 「あら、ありがと」 長い髪を後ろへと流し、少女は微笑ってソレを受け取る。 「仮に、だ」 「うん?」 「君が『時空人』だとする」 「…仮に、って何よ?」 彼の言葉に引っかかりを覚えたが、とりあえず流す。 「だったら、誰が『世迷人』なんだ?」 『時空人』は何度かぱちくりと瞬きをした。 瞬間、クスクスと笑い出す。 「イキナリ本題に入ったわねえ」 莫迦にされたようで、癪に障ったのだろう。 セイは顔を背けて、椅子に腰掛ける。 一通り笑った後、『時空人』は真剣な顔をした。 「言える訳ないでしょ?」 知ったところでどうするの?とでも言いた気だった。 セイは心臓を掴まれた様な、不思議な恐怖観念にかられる。 背筋を冷たいものが走った。 「面倒事は御免よ」 そう言って、一気にカップのミルクを飲み干す。 「…面倒事?」 頷いて、窓の傍に立つ。 「もし、それが貴方の大事なヒトだったら?」 そ、と窓に触れて、打ち付ける雨の振動を感じた。 「もし、それが貴方自身であったら?」 静かに眼を閉じる。 窓に触れていた手が、強く握り締められた。 「それでも、邪魔しないって言い切れる?」 何かが消え行く様を、何度も見てきた。 何度も、ヒトの悲しみを見てきた。 怒りを見てきた。 苦しみも、痛みも、織っていた。 「私は『時空人』だから」 窓に額を擦り付け、重心を傾けた。 「それが、誰の大切なヒトであったとしても、私には関係ないのよ」 例え、ソレが。 私の大切なヒトであったとしても―――…。 例外は、有り得ない。 「さて、と」 彼女の台詞で、我に返った。 先程の言葉が、重くのしかかって来た気がしている。 ず、と重かった。 彼女の中の闇を、一瞬垣間見た気さえした。 「私、ここ気に入っちゃった。暫く泊めてね」 しばしの間。 「…な…何で?!」 「何?文句でもあるっての?」 慌てて反論しようとしたセイだが、『時空人』に気圧されてしまった。 出そうとしていた台詞を飲み込む。 「…アリマセン」 部屋からシーツと毛布を持ってきてソファにかける。 「ちょっと、花の乙女にソファで寝ろって言うの?」 「それは、俺にここで寝ろと…?」 毛布を受け取り、『時空人』は笑う。 「冗談よ、そっちでいいわ」 セイの方も冗談だったらしく、簡単に折れた『時空人』に慌てる。 「俺だって冗談だよ。ベッドを使…」 「いらない」 きっぱりと断る。 微笑みながら、踵を返した。 背中越しに手を振る。 それに、と付け足した。 「他のヒトのベッドでなんか寝たら、あのヒトに叱られてしまうもの」 クスクスと笑い声が聞える。 呆然と後姿を見送っていたが、ふと空いた手を何度か握りなおす。 感覚を確かめるように。 「どういう意味だ…?」 どれもそうだが、セイにとって彼女の台詞には意味の分からないものが多いようだった。 町へ行きたいと、『時空人』が駄々をこねて、セイは町へと連れ出された。 「何が珍しいんだ」 「何にも珍しくないわ」 「は?」 分からない、といったように、セイは『時空人』を見下ろす。 「どの時代でも世界でも。ヒトも町並みも変わらない」 「だったら、何で来たがったんだよ」 「変わらないから愛おしいのよ」 クスクスと笑い、その辺りの売り物を眺める。 「でもね」 林檎を手に取り、クルクルとまわしてみる。 「本当に変わらないものなんて、私だけだわ」 冷たく、どこか淋しそうに彼女は呟いた。 その胸中を織る術など、彼は持たない。 何か言おうとして、セイは口を開きかけた。 「セイ」 不意に名前を呼ばれ、顔を上げる。 『時空人』もつられて同じ方向を見やった。 そこには、独りの少女がいた。 「何やってるんだ?」 セイは彼女に気付き、彼女もまた答えた。 「パン屋のおばさんから、貴方が小さな女の子連れてるって聞いたの」 「あぁ、さっき寄ったからな」 「迷子だったら、手伝おうかと…思ったのだけれど…」 最後の方で掠れる、歯切れの悪い言葉。 不思議に思って、彼女の視線を追う。 確か、セイの後ろには『時空人』がいたはずだ。 「でも」 風に揺れる髪を手で抑えながら、視線が泳ぐ。 「その女(ヒト)…誰?」 (その『女』…?) 視線の先に辿り着いたのは。 「―――…こんにちは」 セイが見たことも無い、『女性』の姿だった。 「私は『時空人』。貴方の名前、聞きたいな?」 先程聞いた子ども特有の高い声ではなく、 落ち着いた静かな声。 カヴァリアは息を呑む。 人の心を射るような、黄金の瞳。 その瞳に飲み込まれるような錯覚を起こし、口を開いた。 「私は…カヴァリア」 『時空人』はニコリと微笑んだ。 「素敵。春の花の名前ね。淡い紫の小さな花だったかしら?」 「え、えぇ」 圧倒されて、つまりながら答えるカヴァリア。 同じくらいの年齢に見えるのに、明らかに感じる威圧感。 「で」 「え?」 「貴方、彼とどういう関係?」 ハッキリと分かる、楽しんでいる様子。 壁際まで彼女を押しやり、詰問する。 「ちょっと待て―――!!」 思わず止めに入るセイ。 「何よ」 「『何』じゃないッ!一体何がしたいんだよ!?」 カヴァリアから『時空人』を遠ざける。 「ただの興味本位。それ以上近付かないでね」 彼の腕を振り解き、ストップをかけた。 向こう側にいる少女に再び尋ねる。 「で、実際のところは?」 「実際も何も…っ、ただの幼馴染よ」 「カヴァリアの言うとおりだ!」 慌てた様子で、2人が弁解する。 その顔はうっすらと朱に染まっていた。 『時空人』は2人の様子を眺めて、嘆息する。 (ふぅん。可愛らしいこと☆) 『時空人』は髪を後ろへと跳ねて、そのままカヴァリアの腕を掴む。 「やっぱり男と話すのはつまらないわ」 イキナリ腕を掴まれ、少女は目を瞬かせた。 「貴方とお話したい。駄目かしら?」 上目遣いに覗き込まれ、思わず可愛いと思ってしまう。 先ほどまでの威圧感は消え去り、同じ歳の少女へと転じた。 「えぇ、構わないわ」 微笑み、頷く。 「あ、オイ!」 止めようとしたセイを制止して、『時空人』は指を突きつけた。 「ダ・メ。ここからは男はお呼びじゃないのよ♪」 じゃあね、と手を振り、そのままセイは取り残された。 「何なんだ…一体」 辺りに広がる、市の騒がしさだけが虚しく聞えた。 「紅茶がいい?それとも珈琲?」 カヴァリアの家。 キッチンからお湯の湧く音がする。 「紅茶がいいな」 『時空人』はリビングのソファに掛けながら答えた。 「おっけ」 ―――残された時間は少ない 『時空人』はひとりごちる。 しかし、矛盾を感じて笑う。 ―――最初から有りもしない時間なのに、おかしいわね 「『時空人』?」 カヴァリアは不思議そうに、ティーカップを差し出す。 「どうかした?」 「いいえ。何でもないわ」 嘲笑を微笑みに変えて、カップを受け取った。 向かい合わせに腰掛ける。 「…定番ダケド、いいかしら?」 『時空人』は確認してから切り出した。 「えぇ?」 「セイのどこが好き?」 唐突な問いかけに、カヴァリアは飲んでいた紅茶を器官に詰まらせたようだ。 真っ赤な顔をして噎せ返る。 「な…何を…っっ?!」 「私に隠し事なんてムリなのよ。白状なさい」 脚を組んで、その上で肘をつく。 意地の悪そうな笑みを浮かべた。 諦めたのか、ため息をついてカヴァリアはカップをソーサに戻した。 「いつ…気付いたの?」 「貴方に会ったときから」 「ソウ」 背もたれに体重を預けて、天井を仰ぐ。 「『心』かしら」 黙ったまま、『時空人』は耳を傾けた。 「困ったときとか、辛いときとか、絶対にそばにいてくれるの」 不思議でしょ、と笑う。 『時空人』は尚も黙ったままだ。 「たった、それだけなのに。ヘンだよね」 「ちっともヘンじゃないわ」 ややあって、『時空人』は口を開いた。 その表情は微かだが曇っている。 「『時空人』…?」 「想いは伝えなきゃダメよ」 言葉にして。 どんなに分かり合っている者同士でも、口にしなければ分からない。 本当の気持ちを織って欲しいなら尚更。 分かっているつもりでなんていたくないから。 分かっているつもりでなんていて欲しくないから。 「貴方は、伝えられなかったの?」 考えるよりも先に、口をついた台詞。 『時空人』も以外だったのか、軽く目を見開いた。 だが、すぐに戻り、変わりに哀しげに微笑んだ。 夜闇は、嫌い。 あの何も無い空間を思い出すから。 何も無いあの空間には、全てがある。 ソレを織っていながら、尚も淋しいと思うのは我侭だろうか。 星々が空に散らばり、瞬いている。 『時空人』はカヴァリアに、セイを誘って外に行くよう促した。 「君は?」 「私はイイわ」 セイを見て、ヒラヒラと手を振る。 2人でいってらっしゃいと言わんばかりに。 彼らが出て行ったあとに、小さく呟く。 誰にも聞えないくらいの小さな声で。 「私にはやるべきことがまだ、残っているもの」 残された時間、2人きりにしてあげたい。 「残酷、よね」 ぽつりと、同じ様に呟いた。 天井を仰いで、目を閉じる。 スゥと闇に飲み込まれるように、『時空人』の姿は消えていった。 気温が高いとはいえ、夜はやはり冷える。 2人は羽織るものを持って外に出たのが正解だと思った。 丘に座り込み、空を見上げる。 「あれ、ジンタス星よね」 「向こうはレイスヒア星」 「小さいとき、よくこうして星見にきてたよね」 楽しそうにセイを覗き込む。 「そうだな」 クスクスと笑っていたが、その笑みを絶やしてカヴァリアは俯く。 「こんな風に一緒にいなくなったのって、いつからだった?」 「ガキじゃないんだから、いつまでも一緒じゃいられないだろ」 当然だと言う様に、セイは苦笑する。 それぞれに友達も出来るし、違う世界へと歩み始める。 己の望む未来へ向かって。 「カヴァリア?」 「何?」 「どうしたんだ、お前ヘンだぞ」 淋しそうに微笑む彼女を、心配そうに見やる。 「そうかな」 ふ、と視線を逸らす。 「好きな人と一緒にいたいって思うのはオカシイこと?」 突然の告白に、セイは戸惑う。 どう対応していいのか分からない。 いつのまにか、カヴァリアの瞳は涙で潤んでいる。 「カヴァリア?」 やはりおかしい。 そう感じる。 「何だよ、今日はおかしいぞ?」 ポロポロと涙がこぼれる。 ―――ダメ。まだダメよ。お願い、もうちょっと待って そのまま、セイの胸へと縋り付き、嗚咽を殺す。 「私はずっと一緒にいたいと思っていたよ?」 首を振って、掴んでいる手の力を強めた。 別の空間から、『時空人』はその様子を眺めている。 「ホント、損な役回り」 感情のない、抑揚も持たない声だった。 『そんな事出来ない!』 彼女の脳裏に、フラッシュバックのようにして甦る台詞。 『時空人』は頭を振って、声を振り切る。 「だって、私は…」 一生懸命、笑顔を作って、カヴァリアは顔を上げた。 涙をこらえるようにして。 『だって、私は…』 振り切れなかった記憶が、またもや襲ってくる。 カヴァリアの声と被って、同時に響く。 見えるのは泣きそうな、『時空人』の顔。 「貴方を」 セイから離れ、微笑む。 『貴方を』 何も見たくないように、目をきつく閉じている『時空人』。 それが意味の無いことだと、織っているのに。 「『愛しているから』」 重なる台詞。 『時空人』は顔を上げた。 「…私も、まだ…駄目、ね」 彼女は暗闇にあるというのに、ハッキリと姿が浮かび上がっている。 これも『時空人』の成せる技だろうか。 彼女のいる『時空間』は彼女を飲み込むことなどないのだから。 「時間だわ」 言うと、『時空人』は姿を消した。 セイは、無理をしてでも微笑もうとしている彼女の意図が分からない。 ただ、分かっていたのは、彼女の気持ち。 ずっと織りたかった、愛する人の想い。 「俺、も…」 けれど、返事は出来なかった。 カヴァリアの白い指先が、彼の唇を抑える。 ゆっくりと首を振った。 「カヴァリア?」 俯かせていた顔をやっと上げて、彼女は名を呼ぶ。 美しい『死神』の名を。 「『時空人』」 ふわり、とカヴァリアの背後に舞い降りた。 「もう、イイの?」 問うと、彼女は無言で頷いた。 「カヴァリア?『時空人』?」 何かが違う。 セイが感じるのも無理は無い。 『時空人』の二の腕まである長いグローブは無く、 変わりに、絡みつくような文様が描かれている両腕があった。 幼い少女の姿をした『時空人』には、異様にしか見えない。 だからこそ、おかしいと感じた。 「どういう、ことだ?」 考えるな。 考えちゃいけない。 そう思っても、目の前にある事実は変わることは無い。 「カヴァリアは、『世迷人』よ」 淡々と紡がれる、冷たい言葉。 「嘘だ!!」 思わず、セイは叫ぶ。 「嘘じゃないわ」 「そこにいるじゃないか!!」 「今から消すのよ」 事実を突きつける為なのか、わざと残酷な言葉を選んでいる気がしてならない。 「嘘だ!嘘だ!!嘘だ!!!」 「言ったはずよ」 彼女はキッパリと言い放つ。 「それが誰の大切なヒトであったとしても、私には関係ない、と」 『時空人』に殴りかかろうとする気配を感じてか、 カヴァリアは咄嗟に叫ぶ。 「セイ!」 ビクリ、と彼の動きは止まる。 「コレだけは伝えたかったの」 消える前に、1つだけ。 「貴方が私を忘れても」 伝えなければ、いけないと想った。 「私は貴方を愛したことを後悔なんてしないわ」 『時空人』はカヴァリアを後ろから抱きしめる。 『時空人』のその腕は、『世迷人』をこの世から消す為のモノ。 文様はその証なのかもしれない。 「絶対よ」 柔らかく、淡く微笑んだ。 段々と薄れていくカヴァリアの姿を捕まえようと手を伸ばす。 けれど、そんなことが許されるはずも無く、彼の手は宙を凪いだ。 「どう…して…っ」 抑えきれずに、涙が溢れる。 やっと、想いが通じたと思ったのに。 やっと、捕まえたと思ったのに。 「…私が願い事叶えてあげるって言った時、あの子の台詞教えてあげる」 『1つくらいなら、叶えられるよ?』 カヴァリアは首を振る。 『いいの?』 『えぇ』 だって、と彼女は微笑んだ。 「『私の願いは、セイの中だもの』」 セイは目を見開き、『時空人』を見上げた。 「アンタは、あの子の最期の願いにさえ気付かないほど、鈍感なの?」 しっかりしなさい、と軽く叱りつけて、『時空人』は闇へと吸い込まれていった。 『世迷人』が消え、正常な世界へと戻り行く。 確かにあった存在は、最初から無き者になる。 残酷かもしれないけれど、それが『本当』なのだ。 『時空人』の姿を見た者がいないのは、その記憶さえ忘れてしまうからに他ならない。 歩くが、その音はしない。 『時空間』は何かが存在する空間ではない。 音も生じなければ、何も無い。 それでも、歩く。 果てなどないと分かっているのに。 「慣れたりしないよ」 拭おうとしない涙が、頬を伝う。 「どんなに繰り返しても」 立ち止まり、立ちすくむ。 「忘れたりしない。絶対に」 力が抜けたように、座り込んだ。 そこに椅子でもあるかのように。 「悲しみも淋しさも、全部私が覚えてる」 ふと、声が途切れる。 顔を上げて、力なく微笑んだ。 「大丈夫。少し、眠りたいだけ」 『僕が消えるその瞬間に、僕の意識を『時空間』に移すことが出来ますか?』 聞える、遠く、近い世界の懐かしいヒトの声。 胎児のように、体を丸めて時空人は目を閉じる。 『貴女独りが背負うことなんて無い』 ずっとそばにいる、もう聞けない愛しいヒトの声。 だから、呟く。 感じた声に応えるように。 「愛しているわ」 『僕が、ずっとそばにいます』 シェイド 「私の『世迷人』―――…」 深く深く。 その想いは死せることを織らない。 END |
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あとがき。 | ||||
えーと・・・続きます(爆)。 でも、一つ一つ繋がりは無いです。『永遠』みたく。 読みきりみたいな感覚で。 そのうち、ゼロ時空で、『時空人』とシェイドの話も書きたいなあ。 話はしっかりと考えてありますので。 |