あいつがいなくなって何年がたつだろう。
いつまでも、俺が覚えている限り、奴は俺の誇り高き悪友だ。
 そいつの息子が奴とそっくりで見るたびに笑えてくる。
奴が愛しくて、誰よりも大事にしていた彼女には目にしか似てないっていうのが更に面白い。
それをもし今言えたのなら、奴は心底悔しがるに違いない。

 奴・・・ジェームズは、彼女似の子どもを欲しがっていたから。











●●消えない、消せない、忘れない
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「あれ。ハリーから手紙が来て・・・・」
 郵便物を見ながらぼやくリーマスの手からシリウスは最後まで聞かずにそれだけを奪い取る。
その後、ソファーに腰掛けてもくもくと封を切るあたり、ただの親ばかにしか見えなくてリーマスは苦笑いをする。
本当の親は多分そんなことしないだろうに・・・と思いつつ、シリウスに言ってもしょうがないとリーマスはわかっていたので、何も言わず、ソファーの背もたれの方から手紙を見ることにした。
 ハリーは最近まめに手紙を書くようになった。
沢山ではなく、たった1枚とかだけれども、頻繁に来るのは確かだ。
だいたい、周りのロンやハーマイオニーとの出来事でしめている。

「えーっと、“最近図書館に缶詰になっています。”ふむふむ」
「口で言うな」
「“どうしてかと言うと、ハーマイオニーの調べ物に付き合わされているからです。”何かジェームズそっくりだねぇ」
「そうだな」
シリウスはリーマスの手紙復唱に対しての指摘をやめ、相槌をする。
「“副賞は3日後の難題提出ものを写させてくれるので頑張っています。”リリーより優しい・・・・」
「あいつはなかったな・・・」
「え?額にキスだった気がするけど・・・・」
「・・・・・・・・・・」
 切ない思いになるのは俺だけだろうか?とシリウスは心で自問する。
他の誰かに言ったら涙ぐんでくれるに違いない確証はあったが。
「“調べている内容は・・・えっと、マグルには青いバラがないからそれを作りたいらしい。ロンは青くすれば良いと提案したんだけど、ハーマイオニーはそれじゃ納得いかないみたい。咲いて枯れるからこそ意味があるんだって”」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ねぇ、シリウス」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 沈黙を続けるシリウスにリーマスは耐えきれず、笑い出した。
それをじっと冷たい目線で応答するシリウス。
中々笑いとまらないリーマスに、苛々をつのらせ、最後には頭に拳をぶつけた。
「いたっ!」
「笑い過ぎだ」
「だって、リリーも同じ事言ってたじゃないか・・・・それもシリウス最後にはって、ぃって!」
「それ以上言うな!」
真っ赤にして叫ぶシリウスからリーマスは再度叩かれた。
 リーマスは不満そうに手紙を奪い取り、もう一度読み直しながら言う。
「教えてあげれば?ハリーに。青いバラの魔法完成させたの君じゃないか」
「あれ苦労したんだ。誰が教え・・・・!」
 バッと口を手で覆うものの、シリウスは遅かったと悔やんだ。
案の定リーマスは何とも言えない笑みを浮かべている。
「へ〜・・・・苦労、したんだ。君が、苦労を。君がねぇ・・・へーーーーー。やっぱさぁ、自覚あったんじゃなくて?」
「うるせぇ!黙れ!!!」
「ふーーーーん」
 蝶のようにひらひらと避けて、晩御飯でも作ろうかな〜と言いながらキッチンに逃げ込むリーマスにシリウスは怒る気力もうせ、ソファーに足を出して寝転がった。





 彼女はひとりで調べていた。
あの、『青いバラ』をつくろうと・・・・していた。

 初めてそれを聞いた時は勝手にしろよとか結構投げ捨てな思いだったと思う。
 それを作ってあげようと思ったのは・・・バレンタインなんざぁ貰ってしまい、それのお返しに何をするか考えた時だ。
貰った時を覚えている。
女からあげるなと忠告しながら返却すると、彼女はあっさり交わして念を押して渡された。
お返しなんて面倒くさいからあげないつもりでいたのだが、あの性格的に3倍返し並な事をしなければ何になるかわからないと神からの御告げのように幻聴があった気がした。
何も考えていなかったから必死で考えたが、何も浮かばず、リーマスに聞いて見れば彼は手作り返し。
ジェームズはリリーへの事だから色々と参考にならない。
ピーターは自分の持っているお菓子を沢山上げるとか・・・女は菓子に弱いからなぁとか思ったり。
自分もかぶるわけにはいかず、云々考えた故、リリーの『青いバラ』を思いだし、完成させてあげたのだ。

そう、結構苦労したんだよ・・・・馬鹿みたいに時間を費やした事に後悔してたけど、彼女に上げた時の嬉しそうな顔に許してしまった自分がいた。


 勿論、悪友の好きな女になんか手は出さない。
だが、俺はいつのまにか道を間違えてしまったようだ。
いつのまにか、女の理想像は彼女・・・リリーだと思ってしまっている。





「あぁ・・・・俺は馬鹿だ」
「知ってるよ、そんな事」
キッチンから小言をつっこむリーマスは少し御機嫌だった。
 ハリーの手紙を喜ぶのはシリウスだけではない、という事だ。
「そういえば、もうすぐハロウィンだね」
「・・・・・・そうだな」
 シリウスはカレンダーに目を向けた。10月31日までもう少しとしかない。
この日は特別な日だ、お菓子を貰う事に喜ぶのではなく・・・・命日なのだから。

「そうだ。今年はお墓に青いバラをそえてあげなよ」
「はぁ?!」
「最近魔法使ってないでしょ?もう忘れたなんて言わせないよ、絶対覚えてるって確信あるけど?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
図星にシリウスは何も言えず、ただ黙るしかなかった。
 忘れたととぼけようとしていたのだ、書き記した紙がないとか・・・・あんな思い出の魔法嫌でも忘れられないほどだ。
「僕はージャコランタンさんでも作ろうかな」
「なんでだよ・・・・・」

「ジェームズかぼちゃ好きだったし」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」
 そんな理由でか?とも聞けず、シリウスは適当に返事だけしておいた。




 もうすぐ、彼と彼女の日がやってくる。

忘れることの出来ない思いをすべてのせて・・・・






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カンシャのキモチ
『PLEASURES』の本町晃様の追憶祭から強☆奪してきました!(何)
微シリリリな小説にひとめぼれして、即行頂いてきました。
本町サマ、その節はどうも(笑)。
2人はジェームズのことを忘れているんじゃなくて、
2人に限らず、ジェームズにはリリーしかいなくて、
リリーにはジェームズしか駄目だっていうのは既に絶対確定事項になっているんですよ!
絶対そうですよ!(笑)
・・・そういや、ジャコランタンって、あのかぼちゃのおばけランプのことだったんですね。
最近まで、素で知らなくて、何だろうと思ってました(拙宅のハロウィン祭を見れば明らか/爆)。
こんな素敵小説下さって、ホントありがとうございましたー!

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