◆◇選択式お題・「エドウィン・キミが呟いたひとこと」◇◆


*「お前、女だって自覚あんの?」


「だったら、ちっとも手ぇ出そうとしないエドは男だって自覚があるのかしら?」
「だーかーらーっっ!それは置いといてちったぁ、その暴力癖どうにかしろ!!」
「仕方ないじゃない、これがあたしだもの」
「スパナ殴打がか」
「避けられるくせに避けないのはそっちでしょー」


さすがに危ないときは逃げるぞ、オレも。
痛みに甘んじているのは多分、多少なりとも後ろめたさがあるからで。
痛みで誤魔化す不正当な正当化。

*「バ・・・!キスに夢持ってるって言ったの、お前だろうが!」


「言ったけど!言ったけどッッ!!」
「何だよ」
「こんなの、やだぁ…っ」
「なっ、泣くなよ?!」
「折角貰ったあたしのキャンディ〜ッッ」
「…そっちかよ」


あまいあまぁい、レモン味のキス。
確かに夢くらい見てたわよ。
口の中に残った、掠め取られたレモンキャンディのかけら。

*「二度とこんな事すんなって、怒られるかと思った」


「…何で」
「だって、あんたっていつも了承得てからしかしないんだもん」
「どーせ度胸がありませんよ」
「言ってないでしょ、そんなこと」


愛おしくなって、胸がきゅうってなって。
真っ赤な顔は予想通り、嬉しそうな顔は反応は予想外だわ。
抑え切れずに君に抱き付いてキスをした日。

*「・・・あんたは覚えてる?昔読んだ絵本の名前」


「どれの話だ」
「どれでも良いの」
「えーと…内容とタイトルが繋がらん」
「あんたらしいわね」
「何だよ、急に」
「忘れていっちゃうんだなぁと、思って」


寂しそうに1冊の絵本を抱き締めた。
昔々の御伽噺、読んでくれた声を思い出せる?
寄り添うぬくもりと寄り添っていたぬくもり。

*「オレは我慢大会、するつもりないんですけど」


「やってるじゃない、いつもひとりで」
「だからな?好きでやってんじゃねぇって言ってるよな?」
「うん、そうね」
「…ウィンリィさん、お願いだから退いて下さい」
「仕方が無いわ。我慢してるのはエドだけで、あたしは我慢なんてしてないもの」


あぁ、何でこんなのに惚れたんだろ。
積極的なのは嬉しいんだ。
嬉しいけれど手に余るほどの愛しさを、一体何で誤魔化したら良い?

*「好きって言ったら、せめてキスくらいしてくれる?」


「…して欲しいのか」
「出来ればいちいち訊かないでしてくれると嬉しいんだけど」
「ンなこと言ったってこっちだって…!」
「『こっちだって』?」
「…まだ、タイミング掴めないんだよ」


不器用だとは知っていたけどまさかここまでとは。
込み上げた笑いくらい赦してよ。
目を瞑ってお詫びに5秒間だけ待ってあげる。

*「お前の傍にいんの、・・・もう辛ぇよ」


「あたしは全然辛くないけど」
「オ・レ・がッッ!!」
「ふぅん?」
「聴いてねぇだろ、お前」
「聴いてる聴いてる」
「二度言うな」
「聴いてるって、何がご不満よぅ」
「…短いスカートでベッドに寝転がるなしかもそこはオレのベッドだ!!!」
「おお、ワンブレス」
「やっぱ聴いてねぇだろがお前
―――ッッ!!」


だから聴いてるって言ってるじゃない。
いちいち細かいことにうるさい男ね。
辛いくらいにあたしのことスキでいてくれるのが嬉しいのに。

*「悪いけど謝んね−ぞ。許して貰うつもりねぇもん。じゃなきゃ、お前ビビらせるの承知でこんな事するか!」


「悪いと思ってるのに謝らないんだ?」
「そー言ってんだろ」
「うん」
「…怒らねぇのか?」
「嬉しいから怒る必要ないもの」


君が気遣うように瞼へそっとキスをする。
さっきまでの強気はどうしたの?
はやく、その両腕で抱き締めて。

*「あと何回、おかえりって言えるのかな」


「何回だと思う?」
「訊いてるのはあたしなのに」
「じゃ、考えるだけ無駄だ」
「何で」
「オレだって分からないし、お前も分からないなら、導き出される答えなんてないだろ」


そっか、そうだよね。
出る度にいってらっしゃいと、帰ってくる度におかえりを言う。
あと何回なんて、分からない。

*「あんたが 愛してる なんて、言えるわけないでしょ。それくらい、このあたしが知らないとでも思ってたの?」


「…思ってない、けど」
「じゃあ良いじゃない」
「たまには言って欲しいものなんかなーと」
「そりゃ、たまにはね。けど要らない」
「お前、はっきり言うね」
「だってそれよりも先に言うべき言葉があるでしょー」


好きも大好きも滅多に聴けない。
愛してる、なんて重い台詞よりも、そっちをたくさん聴きたいわ。
その方があたし達らしいと思わない?



お題は此方から

箱庭のお茶会



ブラウザの戻るでお戻り下さい