花咲く夜
美しく
全てを惑わす
ただ美しいだけ
サ ク ラ ヨ イ |
「うっわ〜〜酔いそう!!」 高井が見上げながら声を上げる。 頭上には憎々しいほどの桜櫻さくらサクラ まだ満開のときではないだろうに薄紅の花弁を咲かせていた。 「こんなに早咲きしてもいいのかな?」 将も心配そうに上を見上げる。 まだ4月に入ったばかり、こんなに一気に咲いてもいいものか? 心配そうに見上げる将にシゲがからからと笑う。 「そんなに心配すんなや、ポチ。この時期に咲いたってなんも問題あらへん」 「それはそうですけど…」 確かに4月に入った。 だから桜が咲くのはいいのだが… こんなに咲いてるのは少し不思議に思った。 首を傾げている将にシゲはクスッと苦笑を漏らし脇に将の頭を抱え込んだ。 「ええやんか。せっかくの花見やで。楽しまなあかん!!」 「わ〜〜シゲさん!!痛い!! 痛いってば!!」 ワーワー騒ぐ2人を見て水野が大きく溜息をついた。 「おい、いい加減にしろよ。早くしないと勝手に始めちまうぞ」 「あ、待って水野君!」 将がシゲから這い出て水野の後を慌てて追う。 シゲは苦笑いながらその後を追った。 花見をしよう。 そう言って来たのはシゲだった。 もともと面白い事好きな性格であったし、この春の陽気な暖かさで桜もきっといい具 合に咲いている と言ってきたのだ。 春休みのちょっとした息抜き。 水野はシゲのしつこい誘いを苦笑して受け入れ、サッカー部全員でシゲが薦めた桜の 見れる場所へと花見に来たのだ。 そこは先に高井が言ったように酔いそうなほどに見事に咲いた桜が咲いてあった。 「それにしても良く咲いてるね」 将がシートに座りながら隣に座った水野に声をかける。 「そうだな。こんなに桜が咲いてるところなんて始めて見た」 「水野君もそうなんだ。実は僕もそう」 去年は見てる暇無かったし、と照れたように笑う将の隣でシゲがとんでもないこと を言い放った。 「こんなにぎょうさん咲いてるっちゅうことは。それだけ死体も埋まってるっちゅう こっちゃな」 とたんに当たりは静まり返った。 しかし、そんな雰囲気にもまれない人物が一人。 「なぜ桜がこんなに咲いていると死体が埋まっているということになるんだ?」 不破であった。 不破の何故と言う言葉にシゲはにっと笑って答える。 「桜は人の生き血を吸って花弁が赤くなるんやで。死んだ人間を桜の根元に植えれば それだけ桜は 赤く咲くっちゅう話や」 しかし、そんな話は不破に通じる事は無い。 「それはおかしいだろう。桜も他の植物と同じはずだ。なら当然地中の養分を吸収し 成長を続けるはずだから 人の血を吸って成長するということは絶対に無いはずだ」 なにを当たり前のことを言わなくてはいけない、という視線でシゲを見つめる不 破。 シゲはハーっと大きな溜息をつく。 不破にこういった情緒を理解させるのは本当に苦心ものだ。 「でも、なんかそう思うよね」 将が桜を見上げて言う。 暗い空に淡く光る薄紅色。 それは見ている者をどこかへ誘うかのように。 「あ、でもこの下に死体が埋まってるのは嫌だな〜」 桜に囚われそうになって、急いで将は皆に振り向き苦笑した。 シゲが呆れたように首を振った。 「当たり前やボケ、ほんまに死体が埋まってるんやったらここには来んわ」 「ならば、どうして先ほど桜の下には死体があるといったんだ?」 不破が突っ込む。 「アレは言葉の綾やんけ。そんなに真に受けんと」 突っ込みをサラリと交わしてシゲはにっと掴み所の無い笑顔を浮かべた。 不破は珍しくムッとした様な表情を表してシゲを睨んだ。 「はいはい。いつまでもそんなこと話してないでさっさと食べる。片付かないでしょ ?」 そんな2人を止めるべくパンパンと手を叩いて仲裁に入った有希。 2人は有希を見て再び顔を合わせると何事も無かったかのように座り直した。 そんな2人を見てやれやれと肩を落とす水野。 その後、上を見上げると小声で呟いた。 「サクラヨイ、か…」 「サクラヨイ?」 水野の声を聞き止めた将が水野の顔を覗き込み聞いてきた。 水野は将のほうを向いて頷いた。 「誰かが作った言葉らしいんだけど…夜、桜を見るだけで酔いそうな気分になること らしいんだ。 桜宵と掛けた言葉なんだろうけどな」 「そうなんだ…でもその言葉、今日にはすっごく合ってるよね」 「……そうだな」 もう何度目になるのか、2人は頭上にある桜を見上げる。 月が光っていないにも関わらずにも洸に輝く桜。 青暗い空など見えなくくらいに咲いている薄紅。 むせ返るくらいの桜。 それがあまりに幻想的で酔わずにいることなんて不可能だ。 「だー!! シゲ!! それ勝手に食ってんじゃねーよ!!」 「いちいち五月蠅いでジャッキー。早いもん勝ちや」 「わー!! 落ち着け、高井!!」 酔うことなく騒ぎ出す仲間の声を聞いて2人は顔を見合わせ苦笑しあうと、 「小島さん、僕これ食べていい?」 「俺にもくれ」 「あ!! 風祭に水野まで!!」 桜の美しさは取り敢えず置いといて今は思いっきり楽しもう。 サクラヨイはそれを許してくれるだろうから。 Fin |
| あとがき。 |
| 紅桜さん!すいません。 いつものごとくの駄文!!! また変な言葉を作ったような気がしてなりません。 キャラも偽者ですし… ああ、でも不破の考察は書いてて楽しかったです。 って、そんなこと言っている場合ではないです。 紅桜さん、一年間色々ありがとうございました。 これからもよろしくお願いします。 |
| あとがき。 |
| またまた頂いちゃいました。 ありがとうございます!! anam様より、笛!小説!!(笛言うな) 不破君と水野君が出てきてくれたので、喜んでおりますv あぁいう性格と顔(笑)のヒト好きvv anam様の創造語って私、すっごい好きなのですよ。 そうだわ。彼らは中学生。 夜中の出歩きは、モチ保護者同伴で!!(笑) きっとその辺りで功兄が見張っていることでしょう! |
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