Twinkle  Ster



いつも、いつも。
怖くて避けてた。

でも、ほんとはね。
ずっと、待っていたの。


その台詞を。




「ずっと一緒にいたい」
風の吹き抜ける丘で、ケインは目の前の少女へと伝える。
見上げれば、満天の星空。
「この先も、ずっと…」
背中を見せていたミリィは、顔だけ振り返った。
少しだけ驚いたような瞳は、すぐに閉じられる。
頭を戻して、空を見上げた。
す、と伸ばされる腕。
「あの星をくれたらね」
くすくすと微笑いながら、一番明るい星を指差した。
感じるのは、苦笑するようなケインの表情。
ミリィの横に並んで、草原に腰掛けた。
彼女もつられるようにして、座り込む。
盗み見た彼の横顔は、どこか困ったように微笑っていた。


ちくり。


ほんの少し、胸が痛む。

―――ねぇ。無理なこと言うな、っていつもみたいに怒鳴ってよ

いつも通りでない彼に、少しだけ距離感を感じる。
どうして、こんな時ばかり、自分の子どもっぽさを思い織るのだろうか。
「お前はいつも、俺を困らせるな」
ミリィの肩に手を回し、抱きしめる。
「それでも、ずっと」
「『ずっと』?」
悪戯っぽく上目遣いに見やるミリィに、ケインは口ごもる。
気付けば、耳まで真っ赤になっていた。
「『ずっと』、何?」
耳を掴んで、吐息のかかるすぐそばで言葉を紡ぐ。
彼の手はそんな彼女の頬に触れる。
そ、と近付けられる顔。
どちらからともなく、触れ合う唇。
「…ん」
そのまま両手で抱き締め、ミリィの耳元で囁いた。



―――…愛してる」



僅かに見開かれた瞳。
何度か瞬きを繰り返し、そうして、身を委ねる。
「うん」
彼の不器用なプロポーズは、何よりも温かくて。
「さっきの…冗談よ」
顔をケインの胸へ埋めながら呟く。
「?」
「あの星をくれたら、って」
先ほどの台詞を繰り返した。
合点の行った様子で、ケインは頷く。
「あぁ」
ケインから顔を離し、見つめる。
「だって」
にこ、と微笑って、今度は自分から口付けた。



「貴方が、私だけの輝ける星なんだもの」



ずっと、捜してた。
『宇宙一』な存在。
どんなものにそれを求めても、何か物足りなかった。
捜して、捜して。
それでも満たされずに。



そうして、やっと見つけたの。
変わらぬ、真っ直ぐに先を見つめる瞳。
穢れを織らない、少年のような輝き。
貴方と触れ合っていくうちに、気付いたの。


私の捜していたモノに。





「貴方が私の『宇宙一』、よ」



ケインの肩に擦り寄って、囁いた。
星々の輝く、大地の上で。




「愛してる」




見上げ、見つめる。
お互いがお互いを優しく抱きしめる腕。
交わされた、どのキスよりも深い口付け。
その存在を確かめるように、失わないように。
強く、強く。







言葉に出来ない想いを、感じるように。






一筋の光が、夜空を駆けた。









END
あとがき。

お分かりの方もいらっしゃるでしょうが、バラします。
小松未歩の『輝ける星』がベースです、このハナシ。
聞いていて、何となく。
しっかし、短いなぁ。今回は。

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