ゆめうつつ |
あとどれくらい待てばイイ? 気の遠くなるほど待つ覚悟は出来ているわ。 けれど、ね。 待ちきれない気持ちが先走る。 早く、と『彼』の、『彼等』の帰りを急かす。 お願い。 早く、私を抱きしめて。 空気を切り裂く機械音。 それは風を生み出し、草原へと降り立った。 この時代では珍しくもない、宇宙船。 タイプを見る限り、古いものである。 機体の名は『ソードブレイカー』。 どこにでもある宇宙船ではない。 ロストシップと呼ばれる、特別な船。 その中でも特別な意思を持つ船、『ヴォルフィード』。 金髪の少女は脇目も振らず、その船に向かって駆けていく。 ―――これは夢? 脚をもつれさせながらも、懸命に走った。 ―――もし夢なら 夢でも良かった。 叶えてくれるのならば。 ―――決して覚めないで 声を出そうと、口を開く。 「ケイン―――ッッ!!」 『彼』の名を呼んだ瞬間、光に包まれる。 掠れていく、目の前の風景。 一転して、そこは暗闇へと変貌した。 ビクリ、と肩を揺らして目を開く。 「……ゆ…め…?」 突っ伏していた机から起き上がると、溢れてくる涙。 「覚めないでって…言ったじゃない…」 必死に嗚咽をこらえていた口元から、微かに音が漏れた。 思わず口元を両手で抑える。 けれど涙は止まらない。 「…っふ…」 外はまだ日も高く、風に乗って雲が流れている。 そんな穏やかな天気とは裏腹に、彼女の心中は曇っていた。 まるで、晴れることがないかの如く。 震える肩が分かって、自分で自分を抱きしめた。 そう。 ココには誰もいない。 「独りは辛いよ…」 誰もいないことがわかっているから、吐いた弱音。 決して『彼』の前であったとしても、吐かなかった弱音。 だから、願う。 「声、聞かせて」 どんなに名前を呼んでも、届かない。 返事はない。 いっそのこと、壊れてしまいたい。 思いっきり、狂ってしまいたい。 けれど、絶対に忘れたくない。 それほど愛しい想いを抱きしめて、待ち続ける。 愛しければ愛しいほど、身を千切られそうな淋しさに襲われた。 『生きている』ことを、諦めかけたことが無いとは言い切れない。 もしかしたら、と考えたこともあった。 その度に自分を叱咤して、鏡の中の自分へ微笑んだ。 『待つって、決めたんでしょ。諦めるんじゃない!』 『彼』の生還を信じたかった。 『彼』の死など、受け入れたくなかった。 きっと無事であると、言い聞かせた。 不安は、どんな時でも襲い来る。 まるで、『悪夢』のように。 ソレを打ち消す『光』を求めて、焦がれた。 そうして、惹かれた。 許されないと織っていても、想いは募った。 「まだ、伝えてないわ…」 この―――想いを すっくと立ち上がり、窓辺に近寄る。 窓枠へと手をかけて、開いた。 思いっきり息を吸い込む。 「…ケインの莫迦ヤロ――――――ッッッ!!!」 それでも叫び足りなくて、もう一度口を開いた。 そうして起こる、『奇跡』。 『誰が莫迦だってぇ?!』 辺り一面に響く、スピーカーを通した聞き慣れた声。 「…う…そ…」 ミリィは頭で考えるよりも早く、部屋を飛び出した。 慌しい足音が響く。 ドアも乱暴に開け、外へと駆け出した。 空気を切り裂く機械音。 それは風を生み出し、草原へと降り立った。 この時代では珍しくもない、宇宙船。 タイプを見る限り、古いものである。 機体の名は『ソードブレイカー』。 どこにでもある宇宙船ではない。 ロストシップと呼ばれる、特別な船。 その中でも特別な意思を持つ船、『ヴォルフィード』。 金髪の少女は脇目も振らず、その船に向かって駆けていく。 ―――これは夢? 脚をもつれさせながらも、懸命に走った。 ―――もし夢なら…決して覚めないで 夢でも良かった。 叶えてくれるのならば。 ―――…本当にソウ思ってる? 「思うわけ…ナイじゃないッッ!!」 夢なんかで終わるなんてイヤ。 本当の、本物でなくては意味がない。 息が切れるのも気にならなかった。 空から降り立った、真っ白な機体。 外へ向かうハッチが開かれる。 見慣れていた船。 見慣れていたヒト。 だからこそ、待っていた。 だからこそ、会いたかった。 「ケイン―――ッッ!!」 広がる草原が無限に見えても、彼女は走り続ける。 無限ではないことを織っていたから。 必ず、『彼』に辿り付けることがわかっていたから。 「ミリィ!」 私を呼ぶ声が聞える。 聞きたくて聞きたくて堪らなかった声が。 「ケイン!!」 大地を蹴って、ミリィはケインへと抱きついた。 「…ウソじゃないのね?夢じゃないのね?!」 泣きじゃくって、彼のマントへとしがみつく。 ケインは彼女の行動に驚いたのか、一瞬だけ目を見開く。 だが、すぐに彼女を優しく抱きしめた。 「あぁ」 夢でしか見なかった、愛しい人が腕の中にいる。 その温もりだけで、倖せだった。 「ミリィ」 名前を呼ばれ、顔を上げる。 涙で濡れた両目は潤んだままだ。 軽く屈んで、ケインは彼女の瞼に口付けた。 「ただいま、ミリィ」 またこぼれ出した涙を拭うこともせずに、 ミリィはケインの首筋にゆっくりと両腕を回した。 「…おかえりなさい…」 二度と離れることがないように、二人は強く、強くお互いを抱き締めた。 END |
あとがき。 |
ロスト小説第一弾☆ この2人にラブラブして欲しくて書きなぐった小説です!(笑) ケイン、ミリィ、キャナル皆大好きですv でもカップリングはこの2人! だって、キャナルは『お母さん』って感じなんだもの。 見守るって形が一番しっくりくるのです。 本当はこのあと、キャナルとも抱擁シーン(笑)があるのですよ。 省いたけど(爆)。 |