騒がしい雑音が遠くに聞える。
遙は、身体が宙に浮いた感覚を憶えながら、
終には意識を手放した。
燃え盛る遙の家から、隣の家へも飛び火している。
慌てふためくヒトの声。
燃え盛る炎の咆哮。
鈍い音を立てて、崩れ落ちていく家屋。
夜闇を紅く、炎が照らす。
「嫌な予感がして来て見れば、何だよコレはッ!」
炎の熱気にやられないように、速水は顔を腕で隠した。
巻き起こされる風は、厭な熱を帯びている。
「速水!」
ふと、近寄ってくる長身の男に気付く。
「…アンタが『佐助』か?」
男は答えない。
彼の様子に、翔を庇うようにして前へ出た。
感情も何も無い、能面のような面立ち。
何の反応も示さない彼に、苛立ちを覚える。
しかし、それもすぐに消え失せた。
「『御前』様?!」
彼の叫びに、翔は速水よりも前へ出る。
煤で汚れてはいるが、間違いなくそれは遙であった。
「彼女に何をした」
いつもの翔とはかけ離れた低く、冷たい声音。
鋭い眼光が、『佐助』を射抜く。
彼は、無言で遙を差し出した。
意図が分からず、翔は腕を伸ばす。
しっかりと支えたことを確認すると、『佐助』は完全に彼女から手を離した。
「では、確かに」
踵を返し、彼らへと背を向ける。
敵へ背を向けるという事は、戦場では死を意味し、戦う意志を手放すということ。
こちらとて、どうこうするつもりはない。
彼に戦う意志がないのならば、好都合でさえあった。
「待て!」
「何か?」
足を止め、こちらを振り返る。
紅い炎に照らされながら、一層不気味さが増した。



「…お前は敵か?それとも味方か?」



彼の真意を量りかね、翔は疑問をぶつけた。
『佐助』は数秒目を閉じて、開く。
「どちらでもなく、どちらでもある」
理解しがたい返事に、速水が警戒を強めた。
「何?」
「心なさいませ」
『佐助』の長い髪が、彼の表情を隠す。
夜闇に紛れるには、相応しい姿。
「我が主、『頼朝』様が動き出される」
抑揚の無い台詞は、淡々と紡ぎだされる。
棒読みにも聞えた。
「護らなければ、失います」
遠い昔に味わった敗北感が、苦味となって口の中に広がる。





「『静』を、か」





「『御台』様を、です」





彼の返答は、思いもよらぬものだった。
『御台』とは、『北条政子』の別の呼び名。
結びつかない会話に、嫌味を込めて、甲高く速水が声をあげる。
「は?」
やはり、他の者の反応すら気にしない。
どんなものも、主以外は彼にとって意味が無いのだろうか。
「いずれ、答えも出ましょう」
燃え盛る炎を背に、『佐助』は目を閉じる。
何か考えているのか、ゆっくりと首を振った。
踵を返し、彼らに背を向ける。
「今はまだ、時ではない」



『貴方は頼朝様の為にあると言う』



思い出される、遠い記憶。
彼もまた、時の流れに翻弄された者。
女は、彼へと問い続ける。



『ならば、貴方は何故ここにあるのです』



振り返り、彼は今までで一番人間らしい表情を見せた。
彼自身気付いていないのかもしれない。
とても物悲しく、穏やかな。
何を想って、そんな表情を見せるのか。
翔たちには織る術もない。
「私は、約束を護る為にここにある」
彼の長い髪が、何かの爆発音とともに揺れる。
ガスか何かに引火したのだろう。
悲鳴が上がる。



『答えが見つかったら、また私を訪ねなさい』




彼はまだ、彼女から出された問に答えることが出来ない。




「約束とは、何だ?」
翔が尋ねるが、『佐助』は答えない。
答える代わりに、別の言葉を紡ぐ。
「…私の主は、『頼朝』様、ただひとり」
風が渦巻くようにして、流れ始める。
ざざ、と砂がアスファルトの上を移動し始めた。
熱波は依然衰えることなく、こちらにまで届く。
遠くで、複数の消防車のサイレンが聞えた。
「故に、最後に私は敵となるのでございましょう」
全ての雑音が、何も音をなさない。
真白な空間に、彼らだけがいるような錯覚を起こす。
『佐助』の声だけが、耳に響く。



「心なさいませ、『義経』公。そして『弁慶』」



彼は初めて、『義経』達の名を呼んだ。
彼らの存在を確認するかの如く。
流れていた風が、本格的に渦巻き始め、『佐助』の身体を覆い隠す。
あまりの強い風に、2人は目を瞑る。
風が止んだ頃には、『佐助』の姿は無かった。




未だ炎の中、呆然と立ち尽くす沢木。
彼の元に寄り添うと、『佐助』は主の名を呼ぶ。
「『頼朝』様」
怒りを露にした瞳で、彼を睨みつける。
『佐助』は主の八つ当たりにも、意を介さない。
彼の台詞を遮ることもしない。
「『政子』を『義経』に奪われた」
この呟きで、彼は静かに目を閉じる。
彼が『政子』を逃したとは、微塵も思っていない。
怒りだけで形成されている、今の彼を支えるには好都合かもしれない。
そう思い、『佐助』は敢えて、彼の間違いを訂正しなかった。
「この『鐵』が、奴の『銀』と惹かれあう」
ギリ、と沢木は、己が手の内にある刀を握り締める。
『鐵』と称される刀は、キィン、と甲高い音を立てて鈍く閃く。
彼の感情に同調しているのかもしれない。
「逃がしはせぬぞ、『義経』」
穏やかに、けれど禍々しく微笑む彼に、『佐助』は賛同する。
彼の剣に、接吻を落とした。
「御意に、我が君」
炎が一層激しく燃ゆる。
2人の姿は、一瞬の内に消えた。





リン、と澄んだ鈴と似た音色が響く。
だが、決してそれは鈴の音ではない。
翔の奥で、熱く鳴くモノがある。
「…『銀』?」
彼女と出会って、ずっと鳴り続けていたものが、
今になって更に激しく鳴きだした。
彼の中にある『銀』が、手の平へと具現化する。
「何か、言っているのか?」
その様子を眺めながら、彼の手の中にある刀へと目を落とした。
白く、柔らかな光を宿し、翔にしか聞えない音色が、鳴り続ける。
「いや、コレは…共鳴、だ」
「…う、ん」
身じろぎ、翔の腕の中にいる遙がうっすらと目を開く。
その様子に安堵し、速水は声をかけた。
「気が付いたか、『御前』様」
遙は目を見開くと、翔を突き飛ばす。
バランスを保てなくなって、そのまま倒れ込んだ。
「!!」
手を貸そうとする翔を、身体全体で拒絶した。
彼の握る刀に、沢木が起こした惨状を思い出したのだ。
何があったのかも織る由のない2人には、
彼女が何に怯えているのかも分からない。
震える肩を、自分で抱きしめている。
「ど…」
「や…っ、来ない、で…」
不審に思い、近付くが、遙は拒絶の台詞を繰り返すだけ。
彼らは、訳が分からず立ち尽くす。




「来ないで、来ないで、来ないでぇっっ!!」




火事の騒ぎの中、彼女の叫びはかき消される。
おかげで、野次馬がこちらに気付く様子は無い。
「伽津木さん、落ちつ…」
「貴方達の所為よ!!」
ボロボロと涙をこぼしながら、ありったけの罵詈雑言を浴びせた。
煤だらけの頬は、涙を黒く染め上げる。
身体中に力が入らない。
恐怖が身体を支配している。
彼女を動かしている力は、恐らく憤るしかない怒りだ。
「全部、貴方達の所為なんでしょ?!」
覚悟はしていたものの、彼女からの台詞に、翔は呆然とする。
心が痛いとは、こういうことをいうのだろうか。
「父さん達が殺されたのも、沢木先輩がおかしくなったのも」
次々と突き刺さる茨の棘を、翔はひとつひとつ受け止める。
違う人間なのだから、全てを受け止めることなど出来ない。
それでも、彼女を護りたいと想うからこそ、ただ、黙って耐える道を選んだ。
「貴方達と関わってから、全てがおかしくなった!!」
普段の遙ならば、言う筈の無い台詞が、次から次へと零れてくる。
ヒトを傷つけるなど、好んでする人間はいない。
遙は特に、ヒトを傷つけることを極端に嫌っていた。
織らず、何かを失うことを恐れていたのかもしれない。
「何で!?どうしてなの?!」
ガリ、とアスファルトを削る。
触れた肌が、無残に傷付き、血を滲ませた。
その痛みすら感じていない。



「君が、『静』だから」



翔は、ゆっくりと、はっきりと紡ぐ。
「君が『静』の業を背負う限り、抗う術なんてないんだ」
俯く遙は、哀しそうに言う翔の表情に気付かない。
強く、拒絶の意を示し、首を振った。
「織らない!それは私じゃない!!」
戦慄く唇をきつく閉じ、2人を見上げた。
「いらないわ、貴方達にあげるわよ!」
涙で濡れた顔は、紅い炎に染め上げられている。
彼女が、本当にただの少女だと思わせた。
鎌倉の時代、己の命を賭してまで共に闘うと言ってくれた『静』はいない。
「怖くて逃げ出すのか?」
速水は、悔しさを押さえ込みながら、口を開いた。
あの頃、尊敬していた彼女はもういない。
目の前にいる遙は、何も織らない、ただの少女だ。
翔の想いすら裏切って、何故ここに生まれ変わったのがこの少女なのか。
その事実が、悔しくてたまらなかった。
「そうよ、悪い?!普通、怖いに決まってるじゃない!」
速水の胸中など気にすることもなく、遙は言い続ける。
勝手な都合を押し付けられたと感じる彼女は、
被害者のような心地しかない。
「私は普通の高校生だもの!こんな非日常は私の織ってる世界じゃないわ!!」
彼女の憤りも、何もかも、翔は感じながら口を開く。
「だけど、分かっているはずだ」
普段の、穏やかな彼とは違う。
『源義経』と呼ばれていた頃の、その瞳で遙を見つめた。
「逃げても答えが出るわけではないと」
強い眼差しは、彼女の心を縛り付ける。
彼の言うことが全て本当で、偽りがないというのなら、
彼はかつて自分が愛していたヒト。
けれど、前世がそうであったからと、現世でもそうなるとは限らない。
彼の言葉は、重く遙に圧し掛かる。
言われずとも分かっていた。
両親はもういない。
帰るべき場所も無い。
恋人は、遠いところへ行ってしまった。
何もかもが、日常からかけ離れてしまったのだ。
「答えが織りたいなら、共に行こう」
迷う中、彼は何度目かの手を差し出す。
遙はその手をじ、と見つめた。
「…行かないと言ったら、ここで先輩に殺されるだけなんでしょう?」
愛しい者の手にかかるなら本望だ、と言い切れるほど、遙は死に急いではいない。
こんな何も分からないうちに、殺されるなんて御免だ。
「そうだ」
遙の台詞を、翔は短く肯定する。
彼女は、彼の手を掴み、立ち上がった。
「行ってあげる」
最も強く『銀』が鳴く。
『裏巫女』の存在を、教えてくれる。
彼と一心同体である『銀』だからこそ、『静』を間違えることもしない。
「私が『静』だからじゃない」
遙ははっきりと告げる。
恐らく、今までの中で『静御前』に近しい雰囲気を湛えて。
「私が、私である為に行くの」
彼女の強さは、意志の強さにある。
記憶が無いまでも、それは受け継がれていた。
「それで充分だよ」
翔は彼女の手を握り返し、微笑んだ。






『吉野山、嶺の白雪踏み分けて、入りにし人の跡ぞ恋しき』
凛とした煌きは、彼女の全てを輝かす。
閃く扇が、微かな春の香りを漂わせた。
『しづやしず賤のおだまき繰り返し、昔を今になすよしもがな』
透き通った唄声が、神殿の細部にまで響き渡る。
扇を返し、衣が翻る。
白拍子の着物を纏った女は、涙を流しながら、愛しきヒトへの想いを馳せる。
この世で最も強い心を湛えた唄声で。
紡がれるは、『霊鎮めの唄』。
舞い踊るは、『霊鎮めの舞』。
『しづやしず』は『鎮や静』と重なる掛詞。
『鶴岡八幡宮』へと捧げられる、鎮めの言の葉。
薄れかけていたはずの封印の気が、ぐんと高まる。
封印とは、神々を眠りへと誘うもの。
絶対なる力を持つ神が目覚めること、それ即ちヒトの世の終わり。
そうして、それを手に入れるという事は、
その気になれば、いつでも滅びを招くことが出来るという脅しも同然なのだ。
神が眠りから醒めるギリギリの状態を保っていた彼が、
気の流れに気付かぬはずもない。
男がそれに気付いた頃には、舞は殆ど終わりかけていた。
『死に急ぐか』
彼の怒りに便乗するように、家臣達も次々と女へ罵詈雑言を投げつけた。
がちゃりと音がすると、鉄拵えの鞘から、
黒曜石とも見紛うような刀が抜かれた。
キィンと金属が走る音が響く。
『ご自由に』
女は静かに瞳を閉じると、真っ直ぐに彼へと向き追った。
『なりませぬ、頼朝様』
彼の隣に座していた女が、衣を掴み、首を振る。
『放すのだ、政子』
『放しませぬ』
裾を掴んだまま、政子は彼を敢然と見据えた。
『同じ女子として、彼の者の想い痛いほど分かります』
鎌倉の征夷大将軍の北の方ともなれば、護られるだけの姫君ではやっていられない。
身も心も、強くあらねばならないのだ。
『恥じることでも、ましてや罪と言われることでも御座いませぬ』
しかし、1度抜いた刀を鞘に戻すことも出来ない。
彼は強く振りほどくこともせずに、妻を見下ろす。
『放すのだ』
政子は、ならば、と強く叫ぶ。
『この私の想いも無駄、とおっしゃるおつもりですか?』
『政子』
舞姫へと向けていた刀を、ゆっくりと下ろす。
はらはらと見守るしか出来ない家臣達は、胸をなでおろした。
中には、何故早く殺さないのかと不満げに呟く者もいた。
『…許せ』
頼朝は視線を逸らし、彼女の手を振り払うと、剣で空気を凪いだ。
『!!』
一同が息を呑む。
ずぶり、と肉に食い込む感触が、手に伝わった。
血飛沫があがり、倒れ込む人影。
『な…』
彼の身体は一瞬にして硬直した。
生温かい血が、頬を伝う。
戦で、幾度となくヒトを殺し、返り血を浴びた。
屍の山を、馬で駆けた。
慣れきっているはずの、臭い。
なのに、頼朝は動けなかった。





『御台様
――――…!』





周りから声があがる。
女が、真っ赤に染まる政子の身体を抱きとめた。
光を宿さぬ瞳で、彼女は手を伸ばす。
『頼…朝様、貴方を心から…お慕い、申し…あげて…おり、ますれ…ば…』
咳き込み、口から紅い雫が溢れた。
即死に至らずとも、致命傷には変わりない。
『わた、くしの生命…を、以…って』
本来ならば話すことすら、ままならぬ状況であるというのに、彼女は口を開く。
『貴方…を、お止めい、たしま…す…』
舞姫の想いを否定することは、政子の想いをも否定するということ。
舞姫を想い諸共殺すことは、政子の想い諸共殺すということ。
舞姫を護ることで、政子は己と頼朝の絆を護ろうとしたのだ。
『ま、さこ…?』
果たしてそれが、彼に通じたかどうか。
愛しき者の瞳は、2度と開くことはなかった。
『すぐに薬師を!!』
『御台様、御台様!!』
『至急、床の用意を!急げ!!』
途端に、騒がしくなる神殿内。
皆が皆、予想外の出来事に慌てていた。
舞姫だけが、静かに政子を見下ろしている。
『どう、して…』
小さな呟きは、誰の耳にも届かない。
彼女は、己が命を賭して、この宮へと2度と解けぬ封印を施そうとしたのだ。
舞による鎮めの封印と、他に血筋の無い『裏巫女』自身の血の封印。
二重の封印である。
他に血の繋がる者が無いからこそ、
その身を神だけに捧げ、己が身を封印とすることが出来る。
源の血筋を支えるこの『鶴岡八幡宮』さえ封印すれば、
これ以上の源頼朝の暴挙を抑えることが出来ると考えた結果だった。
しかし、計画は崩れた。
捧げられたのは北条の血。
他に血筋のあるものであれば、全く違った効果が齎される。
カシャン、と鍔が石段へとぶつかる。
すり抜け、大地に吸い込まれるようにして、『鐵』が頼朝の手から離れた。
『…皆、何を騒いでおる』
独り言にも聞える声に、年配の家臣がひとり、動きを止める。
怪訝そうに、主を見やった。
『頼朝様…?』
ぼんやりとした、何かに憑かれたかと思うほど、虚ろな眼差し。
深い闇を感じ、ぞ、と身体を萎縮させる。
『政子がどうしたというのだ』
頼朝は膝ま付き、目の前の女を見つめる。
『私が殺したのは、義経と共にあった謀反人、静御前ぞ』
『頼朝様?』
今度こそ、本当に訝しげに家臣達は動きを止めた。
主の様子は、誰が見ても尋常ではなかった。
『政子ならば、ここにいるではないか』
手を伸ばし、血の付いた手で舞姫の頬に触れる。
『なぁ、政子』
壮絶な様相をした男を、彼女は黙って見据えた。
入ってくる感情と、予感。



―――宮を血で汚した源の血は…絶える



彼女は目を閉じた。



―――贄となった北条の血が…栄える



愛する者が護ろうとしているこの国を、こんな莫迦げたことで潰すわけには行かない。
恐らく頼朝が、愛する者を己が手で殺めたと自覚したのなら、
この国すら殺してしまうだろう。
想像に易かった。




―――ならば、私は私のやり方で、この国を護りましょう




次に目を開けば、静は静でなくなる。
日ノ本の国を護る為ならば、この人生、愛する者へと捧げよう。
例えそれが、愛する者の敵のものとなろうとも。





何の引き合わせか、悪戯か。
静と政子の容貌は、双子と見紛う程、瓜二つであったのだ。







『…はい、頼朝様』





政子は、ゆっくりと頷いた。






義経から離れた静は、頼朝の元へ行った。
そうして今、
沢木から離れた遙が、翔の元へと帰る。





動き出した歯車を留める術は、誰も織らない。







END





あとがき
どーしても書きたかったオハナシです。
一応、これで続きは無いのですが、話だけは考えてます。
しかし、書けば書くほど義経が訳の分からん奴になるわ、
弁慶が苦労症になるわ、
静が淡々とした感情をあまり表に出さない奴になるわで大変でした(笑)。
前世のが、キャラが濃いです。
ちなみに、弁慶は静の作った胃薬常備です(爆)。


んで、佐助が静と交わした約束ですが。
問いかけですな。
ちょっと書いてるうちに本人もわからなくなってきたりはしますが、
こんな感じで↓。
静の問の答えは、というと。
頼朝のためにあると言うのならば、己が意志などありえない。
己が意志のあるが故に、頼朝を護ろうとする。
己が意志、つまり、佐助が己の為に生きていると静は言いたかった。
それは決して恥ずべきことではなく、当然のことなのだと。
そうあるからこそ、佐助は頼朝を護ろうとしているのだ、と。
彼のためならば、喜んで命を捨てるような彼に、生きろ、と言外に言っていた。
そうして、答えを探させること(見つかったら訪ね来いという約束)で、
彼を浮世に留めておく役目も果たしている。
佐助は、今もその答えが見つかっていない。
答えを織るためにも、政子である静を護っている。
勿論、頼朝の為に、政子(静)を護っているという理由もある。
が、これまで会った事もない気性を持つ政子(静)に
本人が気付かないほどの淡い恋心を抱いてもいた。

まぁ、こんな感じです。

設定だけが先走りって気がしないでもなかったり。
にしても、長くなってしまった・・・。

キャラ語り。

■遙
どこにでもいるような、普通の女の子。
恋もするし、夢も見る。
頼朝によって、帰る場所を失ってからは、翔たちと行動を共にする。
学校も転校し、速水の家で世話になっている。
色んな場所を点々と移動しては、転校を繰り返す。
記憶は全くないが、封印を前にすると、我織らずに霊鎮めの舞を舞う。
今までは、受け入れて、落ち着いた感じの女の子ばっかりだったので、これはこれで新鮮(笑)。

■翔
一見穏やかな青少年(笑)。
義経の頃の記憶も重なって、結構な策略家である。
前世とは逆転して、速水によく振り回される。
両親は既におらず、彼もまた速見の家に世話になっている。
もうひとりの主人公だというのに、影が薄くなりがち(待て)。
遙のことに関しては、別人の如く豹変する。
武器は『銀』という神剣。
命を贄として、封印を施すことが出来る。
どんなモノの命でも構わないが、そのチカラが強ければ強いほど、強い封印を施すことが出来る。
彼の心と強く同調し、静の生まれ変わりである遙を見つけ出した。

■速水
ちなみに、これは名前です。
頭脳明晰、成績優秀。
ついでに実家は華道の家元。
何気におぼっちゃまだったりします(笑)。
あちこち転校する際は、彼の分家に世話になってます。
母親のみで、父親は物心つく前に他界してます。
厳格な祖父母、母から育てられたわりには、軽い性格。
いざとなったら頼れる兄貴分。
翔を主と仰ぎ、忠誠を誓う。
義経の生まれ変わりだからではなく、彼自身を認めたからである。
特に棒術に長けている。
彼の近しい親族には、前世の業を全て話している為、
翔達のことも深くは追求していない。

■沢木
下の名前は考えてません(オイ)。
このヒトは、殆ど物心ついたときから記憶を持っています。
翔とは違う穏やかさ。
ってか、政子を失ってからの記憶を特に鮮明に受け継いでいる為、壊れたままです。
どんな時でも笑みを絶やさない。
遙が政子(静)の生まれ変わりであることにすぐに気付き、
彼女が己を愛するように仕向ける。
武器は『鐵』と呼ばれる神剣。
これは壊した封印のチカラこそを贄として、力を行使する。
言うまでも無いかもしれないが、『鐵』と『銀』を授けたのは八幡神である。

■佐助
表情も少なく、口数も少ない。
ヒトガタのようではあるが、れっきとした人間。
彼にも、物心付いたときから記憶があった。
沢木を探し出し、再び忠誠を誓う。
彼と再び出会ったときに、つけられたはずの名前も家族も全て捨てた。
前世、戦場で頼朝に助けられ、その恩を返すべく、彼の元に仕えている。
命だけではなく、心も救われた。
己が子ども同然に接する彼に、返しきれないほどの恩を感じている。
まぁ、壊れる前の頼朝のすることだから(笑)。
戦場で、頼朝を身を呈して救い、そのまま勝利へと導いたことから、
『佐助稲荷』と同じ名を授けられた。
頼朝が静を政子とした時に意を唱えなかったのは、彼こそが絶対であるがゆえ。
彼を護る為ならば、どんなことでもする。
天狗術にも似た術を使う。

■静
白拍子であると同時に、裏巫女。
彼女の血筋の女は、皆裏巫女としての力を携えて生まれてくる。
霊鎮めの舞は、封印を施す為の手段の一つ。
チカラを持たない義経は、彼女を頼った。
義経に是非にと請われて、チカラを貸す。
自由奔放な彼に、いつしか心惹かれていった。
義経と別れ、腹に宿していた子どもは流産している。
頼朝が政子を殺して後は、政子に成り代わる。
1192年に頼朝の次子実朝は静が産んでいる。
頼朝の子ども、大姫とは仲が良かったようだ。

■義経
とにかく、つかみ所のないヒト。
静を呆れさせ、弁慶を悩ませる。
官位に頓着せずに、自然体であることを望む。
ただ一心に兄を慕うも、志が違うと気付き、京をでる。
兵法にかけては、天才的。
ヒトを気にしないようでいて、誰よりも他人を思いやる。
そんな所が人望を集めた。

■弁慶
とにかく苦労人。
あまりにものんびりした主人に、いつも胃を痛めている。
心を痛めているのではないところが、何とも悲劇的・・・いや、喜劇的?
義経には劣るものの、巨体とは思えないほどの身軽さ。
武器は7つ。
基本的に、どんな武術も扱える。

■頼朝
至ってマトモなヒト。
常識人で、家臣からの人望も厚い。
真面目すぎるが故に、政子を殺した自責の念に押し潰され、人格が崩壊してしまう。
慕ってくる義経を想い、戦略にも武術にも長けた彼を誇りに思っていた。
だからこそ、裏切られたと思った時の悲しみは計り知れない。

■政子
頼朝の北の方。
凛とした、心の強い女性。
義経と別れさせてしまったコトを、心から詫び、
静が捕らえられている間もちょくちょく顔を見せていた。
頼朝を誰よりも愛している。
己が意志で死を選んだ彼女は、頼朝に殺された事を、全く恨んでいないだろう。