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 ・犬かご・
 
 
 
 「うわ、降って来たね」
 「暫く止まねぇな、こりゃ」
 「珊瑚ちゃん達、濡れてないかな」
 「大丈夫じゃねぇの」
 「そだね」
 「……」
 「わ?!」
 「…濡れるだろ」
 「ありがと、犬夜叉」
 「何だよ」
 「偶には雨の日も良いかな、って」
 「けっ」
 
 
 
 肩を抱いた貴方の腕が、思いの外あたたかかった。
 此のまま眠ってしまったら、貴方は起きるまで抱いててくれる?
 
 
 
 
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 ・弥珊・
 
 
 
 
 「降って来ましたねぇ」
 「そうじゃのう」
 「かごめちゃん達、大丈夫かな」
 「犬夜叉も一緒ですし、大丈夫でしょう」
 「添うだね」
 「かごめが居れば平気じゃ」
 「早く、止まないかな」
 「暫く降りますよ」
 「つまらんのう」
 「休息と思って、一休みしましょう」
 「法師様はいっつも一休みばっかりだ」
 「おや、酷い」
 
 
 
 ほんの少しの一休み。
 貴方の肩に凭れてみたら、小さく微笑って支えてくれた。
 
 
 
 
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 ・殺生丸一行・
 
 
 
 「わわっ!降って来たよ、邪見様っ!!」
 「騒がんでも分かっとるわい!」
 「あっちで雨宿り出来そう。行きましょう、殺生丸様」
 「あぁっ!お前はまた殺生丸様に粗相を…ッ」
 「邪見」
 「は」
 「お出で、阿吽」
 「こら、待てと言うに!りんっ!!」
 「全然止まないねぇ」
 「お前は少し黙って居られんのか」
 「だぁって、眠たくなっちゃう」
 「いっそ寝て居た方が静かで良いわい」
 「邪見様の意地悪ー」
 
 
 
 何も言わない貴方の横顔。
 雨が嫌いでは無いことを、私は多分織っている。
 
 
 
 
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  ・桔梗・
 
 
 「…雨、か」
 「桔梗様」
 「濡れた位で、簡単に崩れはしない」
 「此方に洞が御座います」
 「有難う。胡蝶、飛鳥」
 「いいえ」
 「恵みの雨、だな」
 「はい」
 「…其れに比べて、私は何と醜いのだろうな」
 
 
 
 何も答えなかった二人の童に、私はそ、と目を閉じた。
 私の造った彼のものに、心の洞は容易く織れる。
 
 
 
 
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 ・奈落Side・
 
 
 
 「…雨」
 「気になるのか、神無」
 「別に…」
 「煩わしいだけだ」
 「奈落」
 「野分が来るやもしれん」
 「神楽も…此の雨を感じている」
 「神楽が恋しいか」
 「…分からない」
 「添うで、あろうな」
 「ただ…風が運んでくる雨は、神楽が泣いているようだから」
 
 
 
 静かに、静かに、穏やかに。
 昏く、冷めやる破滅の道を進み行く。
 
 
 
 
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