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 ・エルリック兄弟・
 
 
 
 「あ」
 「何だ?」
 「雨が降ってきたよ」
 「ふーん」
 「退屈そうだね」
 「宿から出られないしな」
 「…兄さんだけでも行って来ればいいのに」
 「濡れるし、汚れるから面倒なだけだ」
 「兄さんってさ」
 「何だよ」
 「何でも無い」
 「何でも無いなら何で笑ってるんだよ、アル!」
 
 
 
 ほんと素直じゃないよね。
 そう言ったら全否定するのは分かっているけどね。
 
 
 
 
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 ・ロックベル家・
 
 
 
 「おや、降ってきたね」
 「デン、家に入りなさーい!」
 「あの2人はちゃんと雨宿り出来ているかねぇ」
 「大丈夫でしょ」
 「お前は言い切るんだね、いつでも」
 「私の鎧機械錆びさせたら承知しないって言ってあるのよ」
 「ほら、動くんじゃないよ。お待ち、デン!」
 「ねぇ、ばっちゃん」
 「何?」
 「皆でまた、暮らせたら良いのにね」
 
 
 
 雷の酷い夜は、3人でベッドに潜り込む。
 遊び疲れて眠るまで、短い夜を過ごしたんだ。
 
 
 
 
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 ・人造人間・
 
 
 
 「ラスト、アメ、雨」
 「グラトニー、それくらいではしゃがないの」
 「外で大口開けてたら、腹に溜まるかもしれねぇぜ?」
 「エンヴィー、莫迦なことを吹き込まないで」
 「何だよ。お堅いな、ラストおばはんはっ」
 「これじゃちっとも捗らないって言ってるのよ」
 「ニオイ、しないよー」
 「死んでないのは確かなんだけどな」
 「ま、手近な所から始めましょ」
 「ラスト、ドコ行くの?」
 「野暮用」
 「ははっ!せいぜい、たらし込んで来いよ」
 
 
 
 雨も何も関係ない。
 彼らは彼らの成すべきことを成す為だけに歩いてく。
 
 
 
 
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  ・軍部・
 
 
 「雨だよ、中尉」
 「そうですね、大佐」
 「こんな日は早く帰りたいものだね」
 「この書類に全部目を通して頂けたのならご自由に」
 「…ヒトには可能不可能と言うも…」
 「大佐、この書類認印下さい〜」
 「こっち急ぎだって言ったじゃないですかぁ!」
 「スンマセン、煙草の灰落として書類に穴開けました」
 「中尉、ブラックハヤテ号逃げてますって!!」
 「…皆、私をそんなに帰らせたくないのかな」
 「自業自得と言うんです」
 
 
 
 仕事の量と雨の量が、
 反比例だったらいいなと常々思う。
 
 
 
 
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 ・傷の男・
 
 
 
 「…雨、か」
 痛み出す傷。
 「大地にとっての恵みも、俺にとっては…」
 擦り寄るぬくもり。
 「参ったな、何も持っていない」
 小さな命すら愛おしいと思えるのに。
 「…兄者、必ず仇を…」
 燃え尽きぬ怒りはどこへ行くと言うのだろう。
 「国家錬金術師は…殺す」
 それがどれほど虚しい所業か織っているはずなのに。
 
 
 
 最早、戻れぬ道を懐かしむことは無い。
 行き着く先が破滅でも、足を止めることはもう、出来ない。
 
 
 
 
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