◆◇エルリック兄弟ロックベル家人造人間軍部傷の男◇◆




・エルリック兄弟・



「あ」
「何だ?」
「雨が降ってきたよ」
「ふーん」
「退屈そうだね」
「宿から出られないしな」
「…兄さんだけでも行って来ればいいのに」
「濡れるし、汚れるから面倒なだけだ」
「兄さんってさ」
「何だよ」
「何でも無い」
「何でも無いなら何で笑ってるんだよ、アル!」



ほんと素直じゃないよね。
そう言ったら全否定するのは分かっているけどね。





・ロックベル家・



「おや、降ってきたね」
「デン、家に入りなさーい!」
「あの2人はちゃんと雨宿り出来ているかねぇ」
「大丈夫でしょ」
「お前は言い切るんだね、いつでも」
「私の鎧機械錆びさせたら承知しないって言ってあるのよ」
「ほら、動くんじゃないよ。お待ち、デン!」
「ねぇ、ばっちゃん」
「何?」
「皆でまた、暮らせたら良いのにね」



雷の酷い夜は、3人でベッドに潜り込む。
遊び疲れて眠るまで、短い夜を過ごしたんだ。





・人造人間・



「ラスト、アメ、雨」
「グラトニー、それくらいではしゃがないの」
「外で大口開けてたら、腹に溜まるかもしれねぇぜ?」
「エンヴィー、莫迦なことを吹き込まないで」
「何だよ。お堅いな、ラストおばはんはっ」
「これじゃちっとも捗らないって言ってるのよ」
「ニオイ、しないよー」
「死んでないのは確かなんだけどな」
「ま、手近な所から始めましょ」
「ラスト、ドコ行くの?」
「野暮用」
「ははっ!せいぜい、たらし込んで来いよ」



雨も何も関係ない。
彼らは彼らの成すべきことを成す為だけに歩いてく。





・軍部・



「雨だよ、中尉」
「そうですね、大佐」
「こんな日は早く帰りたいものだね」
「この書類に全部目を通して頂けたのならご自由に」
「…ヒトには可能不可能と言うも…」
「大佐、この書類認印下さい〜」
「こっち急ぎだって言ったじゃないですかぁ!」
「スンマセン、煙草の灰落として書類に穴開けました」
「中尉、ブラックハヤテ号逃げてますって!!」
「…皆、私をそんなに帰らせたくないのかな」
「自業自得と言うんです」



仕事の量と雨の量が、
反比例だったらいいなと常々思う。





・傷の男・



「…雨、か」
痛み出す傷。
「大地にとっての恵みも、俺にとっては…」
擦り寄るぬくもり。
「参ったな、何も持っていない」
小さな命すら愛おしいと思えるのに。
「…兄者、必ず仇を…」
燃え尽きぬ怒りはどこへ行くと言うのだろう。
「国家錬金術師は…殺す」
それがどれほど虚しい所業か織っているはずなのに。



最早、戻れぬ道を懐かしむことは無い。
行き着く先が破滅でも、足を止めることはもう、出来ない。





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